紫煙の王様 2 (ページ8)

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大事な子ページ8

藍side

すると十束さんが再び汀に向き直る。

「それでね、汀ちゃん…ちょっと、俺達についてきてくれるかな？」

「え…？」

「この前のお詫び…というか、謝罪かな？」

その言葉に汀は明らかに肩を揺らす。僕と若音はそれを見て目付きを鋭くさせる。

「汀、シエル達が心配してるので早く帰りまーー」

「藍、若音…先に帰ってろ」

「NNI！？(汀さん、何言ってるんですか！？)」

「ちゃんと戻るから…俺は用事が終わったらそっちに戻る」

「何言ってるんですか？汀、貴方はこの人達…＜赤の王＞に何されたか分かってるんですか！？赤のクランズマンにされそうになったんですよ？それが怖かったから…」

「藍、それ以上言うな」

汀の放つ空気に僕は思わず口を閉ざす。汀がこう言うときは、＜紫の王＞としての命令だ。そのクランズマンである僕は逆らえない。

「…分かりました。若音、行きますよ」

「AD…D…！！(藍、でも…でも…！！)」

「＜吠舞羅＞の皆さん、一つ…言っておきます」

僕は若音の腕を掴みながら後ろを振り返らずに告げる。

「汀に何かしたら…

ーー僕は貴方達を殺しますから」

十束さんは一瞬目を丸くするが、すぐに口を開く。

「うん、分かってる…この子は、君達の大事な子だからね」

十束さんがやんわりと言う。多分、この人は今微笑んで僕を見ているだろう。振り返らなくても分かるほど、彼の声音には優しさが含まれていた。僕は小さい声でお礼を言い、若音と二人でその場を去る。