名前で呼んで ページ22
汀side
「あの〜…ここは?」
俺がつれてこられたのはとてもオシャレなブティック店。正直言って〈青の王〉にはこの店は似合わない。だって、ここは女性に人気の店で今も女性客で一杯だ。
男性客が珍しいのか、はたまた〈青の王〉がカッコいいのか分からないが女性達は頬染めて〈青の王〉を見つめている。
…後者だな、絶対。
「では、入りましょうか」
俺の質問に答えず〈青の王〉はまるでダンスに誘うかのように自然な動作で手を差し出す。
その瞬間、周りの女性達が黄色い悲鳴を上げる。
なんだろうか…もしや俗に言うBとLだと思っているのだろうか。生憎だが俺はこんなナリでも女だ。男ではない。慣れているからいいが。
俺は手を取るのを躊躇い戸惑う。
というか、この動作をしてこの店に入るということは…。
「俺の性別、知ってるんですか…?」
「ええ、勿論です。さ、行きましょう」
〈青の王〉はにこやかに微笑んでから俺の手を取って店に入っていく。女性客も多いがカップルも多い。
なのでら俺達には物凄く視線が集まるわけで…。
俺は居た堪れなさに顔を俯かせ、〈青の王〉に小声で訊ねる。
「あの、こんな所に何のようですか?」
すると〈青の王〉は爽やかな笑顔でとんでもないことを言い出した。
「貴方に似合う服を買うんですよ」
「………………は?」
ついに俺の耳は可笑しくなったか…いや、この人マジで言った。
「俺に、ですか?その必要性を感じないんですが…」
「いえ、必要ですよ。貴方は女性なのですからきちんと着飾らなければいけません」
あ、何その決定事項。もう覆せない?王様だから?俺も一応王様ですけど…。
俺は〈青の王〉に連れられたまま店内を回る。未だ繋がれたままの手を見て俺はこの場に一君達か居なくて良かったと心底思う。
居たら大惨事だ…。
「…〈青の王〉、貴方は本当に何をしたいんですか?」
「私の名前は礼司でお願いします。休日までそう呼ばれるのは堅苦しいですからね」
えー…それも決定事項ですか?てか、何で俺を休日に誘った?まさか正体がばれた?いやでも…そんな気配は微塵もないし、まず俺は誰にも王だとは言ってない。だとしたら、本当にただの興味本意で…?
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
「〈青のーー」
「名前で」
「…宗像さーー」
「名前で、お願いします」
「………礼、司さん」
俺が名前で呼ぶと〈青の…礼司さんが満足そうに頷く。
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陽楽 - 同じものをもう一回書くの…大変… (2014年7月25日 13時) (レス) id: fbe8c28459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽楽 | 作成日時:2014年7月6日 9時