紫煙の王様 2 (ページ2)

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家出ページ2

藍side

「SNK？(すいません、汀さん来ませんでしたか？)」

若音がbarの扉を開けいきなりそんなことをたずねた。だが、若音の短縮言葉を理解出来るのはこの場で僕だけ。

「え、っと…若音ちゃん、だよね？どうしたの？」

中からおっとりしたような感じの青年が出てきた。どうやら既に若音とは知り合いらしい。

「DNK？(だから、汀さん来ませんでした？)」

「でぃー…えぬ…けー…？」

ニット帽を被った少年が首を傾げながら復唱する。

「エリック、これってなんかの単語？」

「いや…単語じゃなく、ただのローマ字です…」

外国人なのか、ソファで体育座りしていた少年に、聞くが少年は首を振る。若音は伝わらないのがもどかしいのか、僕の腕を引っ張り泣きそうになりながら訴える。

「AKH！！(藍、代わりに話して！！)」

「はいはい…分かりましたよ」

僕は苦笑しながら若音の前に出る。

「初めまして。龍元藍です。すみませんが、ここに琥村汀という方が来ませんでしたか？」

「汀？汀がどうかしたんか」

カウンターの中に居たサングラスをかけた男性が反応する。

汀…？いつの間にそんな下の名前で呼ぶようになったんでしょう。

僕は軽く嫉妬を覚えながらもそんな感情を出さないように答える。

「…汀が、軽く家出してしまいまして、ここに居ると思ったのですが…見当違いでしたか」