アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃１０ - ２ ページ46

悟は、動かないカノジョの目の前に来てはただ、その醜く形成された姿を見上げる。

その表情には、何も無い。

ただ、何の感情も無くカノジョを見上げている。



『悟くん。』



そう呼ぶ彼女の姿を、六眼は映し出す。
悟は、現実を見るように向き合うようにサングラスを外す。

きっと、カノジョが動かないのは"祓われる"ためなんだろう。



『…おねがぃ、ごろちで………ごろしで。』
悟「_______わかった。」


カノジョが、また静かに泣き出した。

悟は、深呼吸をしてはゆっくりと両手を合わせては
小さく呪詞を詠唱する。



悟「位相 黄昏 知慧の瞳」



それは、収束を現実に実現可能させる為の詞。
彼の周囲には大きな反応を作ることは出来ないがカノジョには事足りる。そう判断した。





悟「A、俺が終わらせるから。」




何故、発散させるより"収束"させる事を選択したのか。
それは、彼の最後の甘えであったのかもしれない。

彼女を引き寄せて、終わりたい。




悟「________愛してる。」




出会って間もない、この芽生えてしまった感情。
それは、愛情のような友情のような名も無き純粋な想い。

彼の手のひらに生まれた収束を、
彼はカノジョに目掛けて発動させる。




悟「術式順転『蒼』」




『蒼』に触れたカノジョは、その収束によって削り取られていって_______。







____武道館 通路にて





傑「はぁ………随分手こずらせてくれたね、私の愛馬。」




悟がカノジョと向き合っている仲間、傑は馬型の呪霊を降伏させるまで攻撃を続けていた。今現在はもう動くことは無い。

そして、馬型の呪霊に手をかざした刹那に黒い禍々しい球体と形を成す。

傑は、それを握っては眺めてみる。



傑「……妙だな、通常の呪霊の球体より美しい色をしてる。」



少し、黄金色のような色が相見えるその球体にはどこか愛しさすら感じた。

彼は、呪霊を取り込むためにその球体を口に含む。

丸呑みすれば、まるで吐瀉物を処理した雑巾の様な味が彼を不快にさせる_____はずだった。




傑「________甘い？」




何故か、その呪霊の球体は甘かった。
その異例な事実に、彼の脳内はこう仮定する。








傑「Aから生まれた呪霊は、甘い………

もしかしたら、彼女の呪力は私たちとは根本的に違うのかもしれない。だから、術式以前に呪術師から呪霊が生まれるという異常を可能にしているのか？」




更なる"期待"は、彼の心を踊らせた。

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