アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃１０ - １ ページ45

この武道館が、とてつもなく規格外の狂暴的で強い呪力に包まれる。
それは、全世界の呪術師の脳内に警報を鳴らすほど。
恐ろしい程に、存在感を示す。

まるで、『私はここに居るよ。』と叫んでいるかのように。




悟「……なぁ、嘘だろ。」




悟は、目の前の光景に絶望する。
信じられない、信じたくない、信じるはずがない。

彼女は、人間を捨てて【呪霊】となってしまった。




悟「……頼む、嘘だって…ドッキリか何かだって、言ってくれよ？なんだよこれ、なんなんだよ…何だって、お前が…呪いに塗れなきゃならねぇんだよ…!?なぁ、まだ…俺ら電話すらしてねぇんだって……ダチになったのに、まだ……まだ話し足りねぇのに……なぁ？遊ぶから、遊ぶからさぁ!!



ぜんぶ…ぜんぶ嘘だって、言ってくれよ。なぁ。」



彼女は、呪霊と化してしまった。
視認できるのは、以前の見目麗しく眩い存在で優しい笑顔を向けてくれるような彼女では無い。

上下反対になった頭部に
飛び出した目ん玉がふたつ
首には縄が強く締め付けられていて
縄を締める手だけは異様なまでに大きい

そんな酷く醜い、二頭身の呪霊と化していた。



『ごべんなざぃ……わだし、ぅまれでぎて……』
悟「……お前、Aなのか？違ぇだろ、違ぇよな？」



悟は、静かに怒りを露わにする。
それは、彼女を呑み込んだカノジョに対する強い怒り。




悟「ふざけるなよ、Aを返せ。」



その純粋な殺意故に、彼は目視することが難しい速さでカノジョに打撃を与える。

それは無慈悲に、何度も何度も動くことを許されないカノジョの身体を痛めつける。

だが、カノジョはただ泣くだけだった。

何かを待っているように、ただただ静かに泣くだけだった。



『ぃだぁい……やめで、やべて………』

悟「ちっ、手応えがまったく無いな。おい!!図体ばっかデカくて泣いてるなんてだらしねぇな!!」
『………』



悟の苛立ちの言葉が、カノジョを傷つける。
カノジョは、怒りを剥き出しにして悟目掛けて暴力的な呪力を撃ち放つ。



悟「当たんねぇよ。」



彼の術式、無下限呪術。
無限を現実にする術式であり、彼の周囲には無限が生じている。その為、彼に攻撃が当たらなくなってしまう。



『わ……あぁ………あ"あ……!!』



憤怒に呑まれて、カノジョは無駄に呪力を撃ち続ける。
その無様な様子を見ながら、彼は静かにカノジョに歩み寄る。


呪霊となったカノジョは、可笑しいくらいにその場から動かずにいた。

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