アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃９ - ２ ページ41

傑「……私たち呪術師は、弱者を護るために産まれ存在している。この事実に揺らぎはない。弱きを助け強きをくじく、それがこの社会の理だよ。」


小さく、まるで自分自身に言い聞かせるかのように呟いた。
そんな彼を、彼女は鼻で笑う。



『それは、貴方が生み出した確固たる信念でしょうか？弱者を助けることで、自身のこの努力や労力が報われていると自己暗示をかけているんでしょうか？』



傑は、その言葉を聞こえないふりをする。
彼女はそんな様子もお構い無しに、言葉を並べては彼の言葉に意見を述べ続ける。



『貴方の理想は、貴方の中で完結させればいい。なぜ、貴方は思考ではなくて理想を共有して、押し付けようとするんですか？』


傑「……私は、押し付けるつもりは無い。ただ、それが呪術師にとって良い未来であると」
『私には、私の過去がある。今のこの私を成形しているのは、あのおぞましい人間の本性であり衆悪だ。』
傑「……そうだね。」



『だから私は、私が幸せであれる世界だけを望む。』



彼女の瞳に宿るのは、確固たる信念。
彼の心に留まる信念より、あまりにも輝きが違う。




傑(____嗚呼、君は眩しいな。)




そう思った瞬間、彼の拘束していた力が緩む。
それが隙となり、彼女はそれを見逃さない。

即座に、待機命令を出し続けていた馬の呪霊を背後から襲わせる。傑は、その攻撃を避けようと彼女から手を離しては距離を置く。



『私は、祖父の術式を受け継いだ。それが両親にバレてしまった瞬間に、私はあいつらの中で人間では無くなったんです。』



馬の呪霊が、彼女を護るように立ちはだかる。

Aは傑に向けて、ひとつひとつ聞き漏らさないでと言わんばかりに声を強くして語る。




『弱きを助け強きをくじく？それは、とても綺麗事です。

現実は、力を持つ者が"異常"と見なされ虐げられる。

人間というものは、【異質】なものは遠ざけて排除しようという理不尽な防衛本能を持っている。

産まれてしまうのは、四面楚歌である力持つ弱者。』





【私が周りと違うから、私が間違っている。】


そんな風に決めつけて、彼女を畏れ排除しようとする人間共。
後ろ指さされ、石を投げつけられて、心無い言葉を浴びせられる。
彼女を産んだ両親ですら、彼女を忌み嫌い【呪われている】と声を大にして殺意を向ける。




『私のような可哀想な子を二度と生み出さないように、私は私の為だけに人間を滅ぼすんです。』






だから、私は_____。

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