アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃８「絶望鎮魂歌」 ページ35

彼は流れ込んだ追体験について彼女に問おうとしていた矢先に、誰かが扉をノックした。


日「Aちゃん、大丈夫そ？」

『あっくん、だいじょーぶいぶい。』
日「じゃあ、衣装部屋に来てくださーい。夏油くん、あと少ししたら他の2人もここに戻ってきますから。」
傑「…ぁ、わかりました。」


1人、この控え室に残される傑。
ただ、彼の脳内には今も鮮明に思い出される恐怖の光景。



傑「…………ふぅ」



軽く深呼吸をする。
そして、深く思い出す。

彼女の呪力から得た、彼女の人生の追体験。




目の前に映るのは、人間だった。

目の前に映るのは、一般人だった。

小さなアパートの一室、家具も何も無いガラリとした部屋。

ただ、電灯には縄のようなものが吊り下がっていて。

呪いを感じる小さな手で、その縄に首をかける。



その目の前の、鏡に映った姿は_______。





悟「…る、傑ー？」
傑「っ_____!!」


体内から溢れんばかりの汗が湧き出す
突然の呼び掛けに、彼は飛び上がって距離をとる。

まるで、彼は【誰かに】命を狙われているかのようだ。



悟「……傑、どうした。」
硝「なに、何かあったの？」


傑の異常な様子から、2人は真剣な顔で問うた。
その目の前の光景に、彼は心からの安堵する。



傑「………いや、すまない。少し、なんて言うんだろうね…防衛本能ってやつだよ、たぶん。」

悟「はぁ？」
硝「夏油も、少し眠ったら？」
傑「……いや、目を瞑ってしまったらまた思い出してしまう。一服してくるよ。」



そう言い残して、控え室を出る傑。
彼はまた、自分の中に留めてしまった。

ほら、確固たる信念に小さなヒビが入っている。




傑「……だめだ、何も考えたくないな。」




____舞台袖 倉庫


日「Aちゃん、こんなとこまで来て何を確認したいんだっけ？」


衣装を着て、
メイク・ヘアメイクを完璧にして、
誰もが羨み崇拝する『アイドル』の皮を被って、

呪いの【カノジョ】は小さく笑みを浮かべる。



日「っ_____!?」



日下部が感じた、余りにも凝縮された禍々しい呪力。
背後を振り返ると同時に、それは彼の左目をかする。

体制を崩してしまい、彼は近くの棚に頭を打った。



日「っ……A…ちゃ」
『悟くんの見よう見まねでやってみたけど、いけそうかも。』


頭から出血しており、ぐらぐらと歪んでいる視界と脳内。段々と、意識が消えていく。








『……あっくんは、死なせないからここにいてね。』

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