アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃６ - １ ページ27

傑「………なんだか、君には全て見透かされている気分だな。」



彼の解いた髪を、夜風は攫うように靡かせる。
まるで、彼までもがこの闇の中に消えてしまうようだった。



傑「でも、不思議だな。初めてあったときから、君とは初めてあったような感じがしなかった。」
『……なんでしょうね、脳みそが同じ細胞から出来ているのかも。』
傑「それなら、私たちは血縁だったのかもね。」

『ふふ、それは無理がありますね。』



あの、怒涛の時間とは一転して今の時間はとても心地好い。

まるで、私が普通の高校生のようだ。

これが日々に変わることが出来たなら、さぞ幸せなのだろう。



傑「…ねぇ、A。」
『なんですか？』



傑「……君は、視えているんだろう？」



それは、脈絡もなく言い当てられた私の本質。
恐らく、悟くんの暴走の時にバレてしまったのだろう。

呪霊を召喚して使役している、彼の術式をしっかりと記憶していた瞬間を。



『…あー、バレちゃいました？』

傑「まぁね、悟が暴走した時に私が誤って使ってしまった時にね。君の視線を偶然見てしまったんだ」
『…私も、まさか見えるとは思いませんでした。なんなんでしょうね、貴方たちに会ったからなのかも。』




嘘だけは、大得意なんだ。
アイドルは、嘘を上塗りし続ける存在だもの。

私の嘘は、そうそう見抜けるものではない。




傑「…………もしかしたら、今回の事件の黒幕は君だったりしてね。」
『そんな事があったなら、私はこの世界をモノにするでしょうね。』
傑「ふはっ、そうだったね。君はたしか、世界征服が目標だったか。」



鎌をかけたのか、純粋な疑問だったのか。
貴方の表情や仕草からは読み取れなかったけれどどうやら疑いは少しだけ晴れたみたいだ。



『…なんだか、傑さんと一緒にいるのは悪くないですね。』



私はあえて、貴方の顔は見ない。
視界の端にも映らないように、この醜い世界だけを瞳に映す。

だって、貴方の顔を見てしまったら私の心は揺らぐだろう。



傑「…それは光栄だな。」



一瞬、言葉が詰まったように話をする貴方。
嗚呼、また言葉に出せずに自分の中にしまいこんでしまっているんだね。




傑「…なぁ、A。」
『…なんですか、傑さん。』





傑「…………………………………私はね、」








なかなか言葉を発さない傑さんに視線を向けると、彼は困ったように俯いていた。

そして、彼の言葉を遮るようにベランダの扉が開かれた。

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