アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃４「予定不調和」 ページ16

硝「アイドルって緊張しないの？」


舞台袖。
ザワザワと会場の観客の様子が少しだけ耳に入ってくる。


『うーん…緊張しない、なんて言ったら嘘になりますかね。』


困ったように笑みを零す。そんな彼女の瞳は、静かに揺れていて…硝子は彼女の目元に手を伸ばす。

突然、伸ばされた手に体が少し跳ねるA。
そんな彼女を安心させるように、優しく言葉をかける。



硝「ごめん、睫毛がついてるだけだから。」
『…あ、ありがとうございます。』


目元の輝くラメが取れてしまわないように、硝子は丁寧に優しく抜けてしまった睫毛を取る。
目を瞑ってこちらに身を委ねる彼女に、硝子は少しだけ特別感を抱いてしまった。


硝「…ねぇ、目。開けていーよ。」
『……はい。』



言われたままに目を開ければ、そこには硝子の顔がアップで映し出された。理解出来ない行動は、Aを困惑させた。

その困り顔が、ひどく硝子の気持ちを昂らせた。



硝「…はは、かわいーね。その困った顔。」
『……えっと、硝子さん。』
硝「硝子。五条のことも悟くんって呼んでるよね？私のことも硝子でいーから。あと、タメ口きいて。」



異性ならまだしも、同性からの今までにないアプローチに彼女はかなり困惑している。

彼女は平然を装っているが、内心では四面楚歌の状況にかなり焦っているのだから。



『硝子…ちゃんじゃ、だめかな？』

硝「…まぁ、許す。でも、タメ口は絶対だよ？あいつより私のほうが親密って示さなきゃねぇ」
『……どうして？』
硝「…んー」



硝子はまた、不敵な笑みを浮かべてはAとの距離を詰めてくる。予測できない彼女の行動に、Aはまた少し眉をひそめて身を強ばらせる。





硝「…なんでだろーね、教えない。」





そう言って、優しく彼女の前髪を撫でてほほ笑みかける。

今までにない、例外的な存在。3級、4級と仮定していた呪術師が1番の脅威かもしれない…少しだけ、今日の計画に不安要素が現れていた。



『………』
硝「そんな不安そうな顔をするなよ、いじめたくなるじゃんか。」



やる気のなさげな瞳でケラケラと笑いながら、硝子はAから離れる。それと同時に、会場からは大歓声が聞こえてくる。



硝「見てるからね、頑張っておいで」




そう言って、何事も無かったかのようにひらひらと手を振る。その彼女の本心が、Aには理解できるはずが無くてとてもモヤモヤした気持ち悪さが胸中に渦巻いている。

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