アイするカノジョ。【呪術廻戦】

＃１「噂のアイドル」 ページ2

____東京都 日本武道館



薄暗いその会場には、無数の小さな星が瞬いていた。

音楽が止まると同時に私の鼓膜を支配するのは、静まり返った空間に小さく存在する私の吐息だけだった。


『……はぁ』


まるで肌寒い日に小さな熱を求めるように、私はゆっくり息を吐いた。


その瞬間、大歓声がこの会場にこだまする。

私の歌に、
私の踊りに、
私のパフォーマンスに

私のステージに会場の誰もが熱狂的に声を上げる。


この瞬間が、最高に気持ち悪い。
ここにいる人間誰もが、今をひとつの感情のみで生きている事実が。



『…ありがとう』



マイク越しに響く私の感謝の言葉は、会場内の熱気をさらに上げていった。




『今日はいっぱい、私の呪い(おもい)を受け取って帰ってね。』



感情がひとつに支配されてしまえば、思考は停止する。
だから、アイドルは効率が良い。
幸い、私にはアイドルの素質があった。


そして、呪術師としての素質もあった。





『媒呪命捨』




私の術式のひとつ、自己的に負の感情を生み出すことで自身の呪力を【穢れ】に変えることにより人工的に呪霊を生み出すことが可能となる。


ここにいる人間全て、ひとときの幸福と継続的な負の感情をプレゼントしよう。

呪霊が見えていようがいまいが、私には関係ない。
だって、




『愛してる』




どうせ、お前らの瞳には私の笑顔しか映らないのだから。







そんな人間が、私は滅ぼしたいほどに憎くて大嫌いだ。






____翌日 東京都 呪術高専 第2学年教室


悟「傑〜、昨日のニュース見た？」

傑「ああ、東北地方で珍しいツチノコの目撃情報があったことかい？」
悟「違ぇよ!!てか、地味に気になる内容じゃん!!詳しく!!」



周りは木々に囲まれ、隠されるように存在しているのが呪術師育成専門機関 呪術高等専門学校。

その、東京都に存在する高専に在籍する第2学年の男子生徒2人組が教室で駄弁っていた。



悟「つーか、俺が言いたかったのは愛空A!!」


そう言って、悟は携帯画面を傑に見せる。
小さな液晶には、微笑む女性の画像が映されていた。


傑「……悟、趣味が変わったね」
悟「変わってねーし、傑に教えてもねー」
傑「冗談だよ。意外とミーハーな所があるよね、悟」


拗ねるような悟に対して、呆れたように失笑を零す傑。


悟「たまたまテレビつけたらさー……めっっちゃいい身体してたんだよねこの子」





硝「思春期も大概にしとけよークズ共」

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