Hush-Hush

いつかサムシングブルーのハンギシを。 ページ1

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朝起きてテレビをつけて、朝の情報番組をBGM代わりに流しながら、今日はどんな服を着ようかとクローゼットを開ける。

一昨日買ったPRADAのチョコレートブラッシュドレザーと名付けられたローファーを履くためのコーディネートを考える。


迷っているうちに、気づけば番組は時事問題が一通り終わったあとの芸能コーナーになっていた。


昨日からどのテレビ局も同じ内容ばっかりだな。











_______________"一般人女性と、電撃結婚"











特に珍しくもない内容だ、芸能人が一般人と電撃結婚することなんて。

なんなら週刊誌に一度も撮られずに結婚まで持ち込んだことを褒めたいくらい。

でもその"一般人"が自分のことを指しているなら別。











「へぇ〜私って元モデルの広告マンなんだ」










歯を磨いて、顔を洗って、スキンケアをする。

スキンケアが完全に肌に馴染むまでの時間、ソファーに座ってコーヒーを飲む。

少し睡魔を引きずりながら、まだ覚めない頭でテレビをボーッと見ていると、ほぼ不正解の私の情報をアナウンサーが話していた。










まるで他人事の、結婚。










結婚したはずなのに、私の薬指に指輪はない。おそらくこの先も。


学生時代に付き合っていた彼氏に、おもちゃのようなゴールドの指輪をプレゼントされたことがあった。


嘘みたいな本気の言葉で

「ずっと一緒に居ようね」なんて言われて、薬指にその指輪をはめられそうになった瞬間

「ごめん別れて」と言ったことを昨日のことのように覚えている。


「この薬指にはめる指輪は、そんなダサいのじゃダメ」


言葉にはしなかったものの、そんなことを思っていた19歳の秋。









そして26歳の冬。

私は望んだキャリアと引き換えに、望んでいない人と結婚をした。



親にも、友達にも、秘密の結婚。

ごく一部の人間しか知らない極秘の結婚。



恋だとか愛だとか、そんな感情は1ミリもない。

そこにあるのは、利害関係が一致したことのみ。











_______________合理的な、契約結婚。












どうか、お幸せに。







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