◇ ページ10
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痛がる俺を横目に、再度口付けてくる。
今度は抑え込むように上から。舌付きで。
結構深くまで切れたんだろう、血が喉を伝う感覚がする。
呼吸がしにくく、酸欠で意識が飛びそうになるこのキスが前は好きだった。
蓮で頭が埋め尽くされる感じがしていたからだ。
今も好きな事には変わりないが、何故このタイミングでこんなキスをしてくるのか分からない。
離さない、別れないと言われているような感覚になるからやめて欲しいのだが。
三十路の野郎が、自意識過剰な勘違いとか笑えない。
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いつまでそうしていたのか、本当に意識を手放しそうになった頃、やっと離れた唇に物足りなく感じてしまう。
あぁ、これで蓮と触れ合うのも最後なのか。そう思うとまた泣きそうになる。俺はこんなに涙脆かったか?
「気は、」
済みましたか?と問い掛けるはずだった。
さっきの仕返しとばかりに途中で被せられた言葉に拍子抜けする。
「透、腹空いてないか?お粥の材料買ってきてさ〜」
そういう蓮はいつもの蓮だった。
俺の話なんか無かったかのように、さっきまでの雰囲気なんか無かったかのように。
「たまご粥、食えるよな?」
笑顔で材料を見せてくる蓮に苛立つ。
「出てけよ」
「ん〜?」
「出てけ!」
感情に任せて怒鳴る。
興奮しているからだろう上がる息に肩が上下に動く。
「分かったよ」
たまご粥の材料を台所に置きっ放しに、小さく溜息をこぼす蓮に罪悪感が募る。
「無理すんなよ」
そう言って俯く俺の顔を上げさせれば、前髪を持ち上げられる。
ヒヤリとした感覚に小さく声を漏らす。
「あ、冷えピタ…」
呟く俺に微笑みながら頭を撫で出て行く蓮。
最後の最後まで格好いいとか反則だろ。
「風邪なんか引いてないわ、バカ」
閉まった扉に呟いても蓮に届くはずはなかった。
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めがね - コメント失礼します!設定から何からめっちゃ好きです!! (12月30日 13時) (レス) @page11 id: 913ad593a1 (このIDを非表示/違反報告)
にじみます(プロフ) - はるさん» コメント有難うございます。とても嬉しく感じています。そう言っていただけるととても励みになります。有難うございますね、頑張ります。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 27dae3790b (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - コメント失礼します!こーゆーすれ違いのじれったい感じの作品すごくすごく好きです!!安室さん可愛いし、主くんかっこいいしで最高です!更新頑張ってください!応援してます!! (2018年8月29日 16時) (レス) id: 3701c955d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじみます | 作成日時:2018年8月26日 3時