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思わず、立ち上がって相葉くんに迫ってしまった。一気に店中の視線が俺に向けられたのを感じる。
顔の熱が上がってきそうだったが、相葉くんを見つめる目を逸らすわけにはいかなかった。
体感30秒。
2人で見つめ合った後、先に口を開いたのは相葉くんだった。
「おーちゃん。一回落ち着こっか」
俺なんかよりも全然冷静な相葉くんは、先程の驚いたような表情からスッと真剣な顔に戻って、店長らしくお客さんに「お騒がせしてすみません」と謝っている。言われた通り、落ち着くために椅子に座ると、興奮しすぎたかもしれないと自分も冷静になれた気がした。
「えっと、翔ちゃんが送ってきたのは“智くんに会いたいんだけど、もしお店に来たら教えて”って。今すぐ会いたいって言ってるわけじゃないんだけど、今ここにおーちゃんが来てるよって言っても良いかどうか聞こうと思って」
冷静になれた、は俺の勘違いだったようだ。だって、ほら、治ったと思った胸のドキドキがまた鼓動している。ソワソワして、また落ち着かなくなっている。
今すぐに会えるわけではないと聞いて、少しガッカリした。だけど、翔くんが俺に会おうとしてくれていることに口角が緩みそうになった。
「……でも」
『……？』
「もちろん良いよ」そう言おうとして口を開きかけたが、相葉くんのそのバツが悪そうな顔を見て、一言呟いたその声を聞いて、鼓動の音が大きくなる。
「翔ちゃんがどういうつもりなのか、分からなくて」
どういうつもり……つもりも何も無いのではないか。パッと思ったことはそれだった。どんな怖いことを言われるのか、ビクビクしていたのが少し、拍子抜けした。
しかし、そんな考えは甘いことに気付かされる。
「いや、この前まで翔ちゃんは"もう会わない方がいい"って言ってたのに急に考えが変わったみたいだったからどうしてかな、って」
そ……か………。
もしかしたら、会って正式に「二度と会わない」と言われてしまう可能性もあるということか。全く、俺は馬鹿だな。浮かれていたのは俺だけなんだ。
「あぁ、えと、なんていうか、今すぐ伝えるよりも先に向こうの意図を確認してからでも遅くないんじゃないかなと思ってさ！ごめん！仲直りして欲しくない訳じゃないんだよ！？」
露骨に落ち込んだ俺を相葉くんは慌ててフォローする。
ありがとう、ちゃんと分かってるよ。
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作者名：フレンチ糖スト | 作成日時：2022年2月6日 21時
