アトリエに残された櫻 (ページ22)

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第8章《カリブラコアの花言葉》ページ22

朝、目が覚めるとなんだかパッチリ目が開かなくて、まだ眠いのか…？なんて思いながら窓に映る自分の姿を見て納得した。目が腫れていたんだ。

昨日はぽろぽろぽろぽろ涙が溢れて止まらなくて、鼻水も出てぐっちゃぐちゃで汚かった。

窓に映るその顔はしっかりとした泣き跡と真っ赤に染まってぷっくりした瞼と涙袋をつけて、昨日以上に酷い顔になっている気がした。しかも鼻の中は半端に乾燥していて、息がしづらい。

昨日の名残を啜って立ち上がる。こんな顔だけど今日の俺には目的がある。

昨日買い漁ったコンビニ弁当とかを食べずに外へ出た。袋から微妙にはみ出したサンドイッチ達もそのままにして。昨日の雨とは打って変わって今日は晴れていた。

景色が変わったような気のする、海沿いの道を歩く。砂浜の方を見るとゴミが増えている気がした。今日は珍しく、砂浜に人がいた。

何してるんだろうなぁ。なんてふわふわ考えつつ、あれが翔くんだったらなぁ…と想像してしまう。

翔くんだったら俺はどうするのか。長距離を歩き回らなくて良くなる、それだけ。でも、会いたいと願っている為に翔くんに出くわすという運命を信じずにはいられない。

海沿いの道を抜けて街中に入っていく。思い出したのは初めてここを翔くんと通った日。あの時の翔くんの優しさとか思い出してまた、あの頃に戻りたいと思った。いやいや、今までに負けないくらいこれからを楽しくしていくと決めたんだ。

今はもう、歩き慣れたその道をずんずん歩いていく。見えてきた相葉くんの店に、翔くんがいますように、と祈りながら店のドアを開けた。

俺は完全に浮かれていた。そう簡単に過去を取り戻せない事に気づけなかった。俺はまた、動けなくなってしまうのだろうか。