アトリエに残された桜 (ページ34)

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ふらふらふらふらと翔くんと2人で台を周る。今のところ、コーナーに入ったは良いものの、特に何か景品を取りたいという雰囲気はなく、ただ周りをぶらぶらしているのが楽しいと言った感じだ。2人して、見るだけの散歩状態を続け、一通りを回ったところで先を歩いていた翔くんが振り返る。

「何かやりたい奴あった？」

自分から誘っておいて何もなかったのだろうか。それとも歩いただけで満足だったのか。聞かれた内容がなんだか人任せに感じて、少しムッと腑に落ちない感覚に襲われた。

『んー…特には…？翔くんは？何かあった？』

質問を質問で返すような真似をして、翔くんに決断を委ねてみる。俺の方こそ、人任せではないか。

「俺？俺はね……あっそうだあっちにお菓子あったよね」

そう言って翔くんが俺の横をすり抜けて行った。自分の人任せに気付いた俺は先を行く翔くんに置いていかれないよう、背中を追う。

「これこれ」

指差す先を辿れば、まるで芸術作品かのように積み上げられたきのこの山、たけのこの里があった。

『あーこれねー』

このタイプと言えば一回のプレイで大量獲得するという一攫千金が狙いたくなる台だ。そうは言ってもなかなか一回で、なんていく訳がないのだが。

「いっぱい取れそうだよねー」

『いやいやいや、そう上手くいかないでしょ』

俺がそう否定的に言ってみると

「やってみないと分かんないじゃん」

と、翔くんは唇を尖らせた。

可愛い。

『やってみるか！』

「おぉ！やろう！」

ひとつ数百円のお菓子にいくら注ぎ込むことになるのか、不安ではあるけどやってみなくちゃ分からない、という翔くんの尖らせた唇に釣られてやって見ることに。

『じゃあ俺からやってみるね』

先陣を切って俺から100円を投入する。ピロピロと機械的な音楽が流れ出し、1と書かれたボタンがオレンジに光る。不思議と慎重にボタンを押し、動き出したアームが横に動き出す。慎重に慎重に、ここと狙いを定めた地点まで持って行ってパッと手を離す。

あっ…ちょっと早かったかな。

次は奥へ進む2のボタン。本当は台の側面を覗いて正確に位置を調整したいところだけど、残念ながら側面はボトルグミの台と板チョコの台でサンドされていて見ることは出来ない。よって自分の感覚を頼りにここだ、と今度は静かにボタンを離した。