アトリエに残された桜 (ページ33)

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最終ラップに差し掛かり、4位にまで上り詰めることができた俺は翔くんのことを思い出し、隣をチラ見した。相変わらずの楽しそうな顔だが、どこか先程とは違った余裕が見られる。何故だろうと思いながら順位を落とさないようにレースの続きをしていると、不意に見覚えのあるキャラクターが俺の横を通り過ぎて行った。

それは翔くんが使用していたキャラクター、マリオだった。

『えっ』

思わず声が漏れてしまい、慌てて隣を見る。でも、翔くんには今の声は聞こえなかったみたいで「よっしゃ2位だあ！」なんて言いながら走っている。

翔くんが………2位？

さっきまでガツガツ壁にぶつかってたのに？散々コースアウトしてたのに？

2位？

跳ね上がりすぎじゃない？

ドッキリにでも掛けられているんじゃないかという展開に戸惑った俺は分かりやすい位置にあったバナナに引っ掛かるという凡ミスをしてしまい、順位が落ちてしまった。

そのせいがあって俺は結局さっきと変わらない順位、6位でFINISHとなった。一方の翔くんは謎の大躍進を遂げ、第3位に輝いてレースを終えた。

「やったぁー！俺、3位になったよ！」

子供のように無邪気に今の結果を伝えてくれる翔くん。あぁ、可愛いな。いやいやいや、そうじゃなくて。

『すごいね、3位なんて。どうしたの？』

「え？なんか…コツ、掴んだ感じ？」

疑問系で返された答えに未だ衝撃を忘れられず、まさに開いた口が塞がらない状態で翔くんを見つめる。すると、翔くんはなんだか照れたように笑って言った。

「あ、いやコツ掴んだもそうだけどアイテムも良いやつばっかだったから多分それのおかげだよ」

なんて謙遜を。チラ見だったからよく見えてはいなかったけれど確実に上手くなっている翔くんがいたよ、確かにいたよ。え、何。翔くんの成長スピード異常じゃない？それともこのゲームってそんなにやり込まなくても出来ちゃう系のゲームだった？

頭の中で翔くんの凄さに驚き、疑問符ばかりを浮かべていると翔くんが新たなゲームで遊ぼうと俺を誘う。

「あ、ねえねえ智くんUFOキャッチャーやろうよ」

『えぁ？あぁ、いいよ』

翔くんのペースに乗せられ、手を引かれてUFOキャッチャーのコーナーへ向かう。UFOキャッチャーのコーナーはさっきのマ◯オカートが置いてあったスペースよりもポップな雰囲気で子供も楽しめる明るさがあった。