アトリエに残された桜 (ページ32)

今日:53 hit、昨日:23 hit、合計:32,368 hit

7. ページ32

声のした方をチラリと確認すると苦戦している翔くんの姿が見えた。壁にぶつかったと思ったらコースアウトしたり、オフロードに入ったと思ったら逆走してしまったり。全然前に進んでいかなくてどんどん他のプレイヤーに突き放されていっている。

俺も1位になる程上手い訳ではないし、俺もコースアウトや壁にぶつかるなどは何回か起こしているけど多分ついて行けている方だと思う。翔くんに比べれば。

結果。
俺が6位で翔くんが最下位だった。どっちも凄いとは言えない結果に終わり、喜びも何も感じる場所がない状態になったがそれでも翔くんは楽しかったようで、「もう一回やろう！」とやる前と変わらないキラキラした瞳を持って俺を誘ってきた。

『よーし、次はもうちょっと頑張る！』

俺だって1位を獲ってみたいという願望は持っているので翔くんが乗り気なら、とすぐさまOKし、2回目をプレイすることになった。

『次はどこがいい？』

俺がそう訊ねると画面をジーッと見た翔くんは

「あ、このコースなんか綺麗」

と、指差した。その差した先を見ればなんか、なんか難しそうな雰囲気の漂うコース、パックマンスタジアムがあった。

『え、なんか難しそうじゃない？』

「大丈夫だよ！きっと大して変わんないよ」

何故か強気な翔くんに押され、パックマンカップを選択する。大丈夫か？と不安な気持ちを抱えてレースのスタートを待った。

コース紹介の映像が再び流れ、どんなコースか確認するとやっぱりなんか複雑そうなコースでやっぱ別のコースにした方が良かったんじゃないかと翔くんの方を向いたが、翔くんはどうしてかキラキラ感にワクワク感を上乗せした瞳で画面を見つめていた。

そこで気づく。

多分、順位は諦めているな、と。

先程同様にカウントダウンが始まったので、さっきは忘れてしまっていたロケットスタートを実践し、俺はさっきよりも速いグループに入ることが出来た。

よし、スタートが決まれば順位も上げやすくて行ける、と思い、さっきの6位というなんとも微妙な順位を超えようと奮闘し始める。

2回目ということで1回目よりもミスが少なく、いい調子で順位が上がっていく。翔くんが言ったようにコース自体は大して変わらなかったため、いいぞいいぞと自分に言い聞かせながらレースを走って行った。