アトリエに残された桜 (ページ27)

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翔くんが調べてくれた道に沿って歩いて15分。俺たちは目的のケーキ屋にたどり着いた。店の外観は淡いクリーム色の壁と周りを取り囲む緑が印象的で一目で女の子達が列をなす風景が浮かんだ。

そんな店に男2人っきりで入って行くのは少々躊躇われるかに思えたが、翔くんはそんなの気にしていない様子だ。

「入るよ？智くん」

翔くんの先導によって店内へと入っていく。一歩、中へ足を踏み出せばなんてことはない。店内を見ると思ったよりも入りやすい感じで一重に女の子だけを客層に入れている訳ではないようだ。

ケーキ屋、とは言ってもケーキを売っているだけではないようで店内にはイートインスペースというのか、テーブルやイスが置かれていた。その一角で女の子2人組が美味しそうにスイーツを食べていた。

「いらっしゃいませ」

パティシエのイメージに相応しい、白い服に赤い帽子を被った店員さんが対応してくれる。

「どれにする？」

ショーケースを覗いて翔くんがこちらを振り返る。翔くんの側に寄って一緒にショーケースを覗くと、そのには色とりどりで鮮やかなケーキ達が凛として乱れることなく並んでいた。それはまるで、ここに並んでいることが誇らしいことのようで一つ一つがキラキラしていた。

『うーん、どうしようかな…』

ぴっちりと並んでいるケーキをじっくりと眺めていてちょっと横目に翔くんを見ると、思いもよらず目が合った。

あ、とお互いすぐに目を逸らしてしまったが目が合ったことに理由を求めてしまって胸がドキドキしている。

『えっと、俺は…チョコレートケーキにしようかな』

ドキドキを抑えるのと、それを悟られないように誤魔化す為に半ば強引に注文を決める。我ながら、誤魔化していることはバレバレだ。

「じゃ、じゃあ俺はこのロールケーキで」

翔くんも動揺しているようだ。

お互いに動揺していることがバレバレでなんだか可笑しくなった。

「こちらは店内でお召し上がりになりますか？」

どうする？と目を合わせたが、考えてみれば店内以外で食べられる、良いところなんて思いつきもしないので店内で食べて行くことにした。

少々お待ちください、とケーキを取り出す店員さんを待つ間俺たちに会話は無い。気まずさを感じていながら、先程の恥ずかしさが上回って会話なんて今は出来ないのだ。