アトリエに残された桜 (ページ12)

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第2章《蓮華草の花言葉》ページ12

『ん………』

窓から照りつける太陽が眩しくて目を覚ました。昨日までのことはまるで悪い夢だったみたいに今まで通りの目覚めだった。

作品は、昨日のノリで完成した。

これを翔くんに見せたら、どんな反応をするかな…

そんなことを一瞬考えたが、会える保証もないし変に期待して何もなかったら悲しいので急いで考えを振り捨てた。

んーっと大きく背伸び。今日は何をしようかな。作品は今日出す予定ではないし、この作品が完成したお陰で特にやらなくてはいけない仕事というのもなくなった。

うーん…画材でも買い足しに行こうか。それともまたここに籠ってフィギュアでも作ろうか……でも一度家に帰って着替えを用意しないと。

数日は生活できる程度に色々揃えてあるが、着替えなども置いてある訳ではないので家へ帰らないといけない。そこはちょっと面倒に思うが、俺としてはアトリエと家の区別をつける大事な部分だ。

外へ出るか、中で籠るか………。

究極の選択とまでは言えないながらも、とても悩ましい選択にその辺をウロウロしながら考えた。

今日、外に出たら翔くんに会えるかな…。

ふと、足を止めて運命的な妄想を繰り広げる。アトリエを出たら丁度彼がチャイムを鳴らそうとしたところで……。海沿いの道を歩いていたら反対方向から丁度彼が歩いてきて……。あるいは何でもないところでたまたま、偶然にも出くわして……。

ありもしない妄想が今にも割れそうな風船くらいに膨れ上がった頃、ぐぅぅっというお腹の割れるような音を合図に時計を確認すると、もうすぐお昼の時間なることに気付いた。

昨日も似た感じだったような……笑

本当に何かを導くようにタイミング良く鳴る腹時計だ。ここは、騙されたと思って腹時計に従おうと思った。もしかしたら、俺の知らない世界を開いてくれるほんの些細なきっかけなのかもしれないと思い始めたから。

そうと決めたら、昼飯を食べに行こう。

先程言ったように色々揃えてあるとはいえ、食材までが豊富に揃っている訳ではないし、何か作ろうとするのも面倒くさい。

昨日、翔くんと行ったあのお店に行こうかな。

覚えたての言葉を使いたいが如く、相葉くんの店へ行こうと思い立ち、筆やバケツなど最低限の片付けを始める。

そしてその時、俺の知らない世界は既に開き始めていた。