アトリエに残された桜 (ページ7)

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「お待たせ～、なんか盛り上がってんね」

熱々な湯気を漂わせた相葉雅紀くんが厨房から戻ってきた。彼の持つお盆の上には先程の心地良い油が形を成している。

「凄いよ、智くんアーティストなんだって」

「そうなの！？それは凄いね！どんなのかくの？」

『あぁ…まぁ色々と』

「そっかぁ、いつか見せてね！おーちゃんの作品！」

『おーちゃん？？？』

突然呼ばれた親しげな呼び名に思わず目を白黒させて分かりやすく戸惑う。

「ダメだった？大野だし、おーちゃんかなって」

「相葉くん、多分智くんは何の段階も踏まずにあだ名呼びし出したことに驚いたんだと思うよ？」

全くその通りです。

「あひゃ？笑」

『いや、あだ名で呼んでくれて嬉しいよ』

よっしゃ、今日からおーちゃんだよ、そう言って相葉ちゃんは翔くんの隣へ座った。俺と翔くんは相葉ちゃんお手製の料理へと手をつける。この相葉ちゃん呼びは本人が呼んでほしいと言ってくれた。

翔くんの"いつもの"とは炒飯の上に麻婆豆腐をぶっかけた店内のメニューを見る限りはない、翔くん専用ととれるメニューだった。

美味そう。

『「いただきまーす』」

自然と声を揃えてお決まりの言葉を言い、まずは餃子の一つに齧り付く。にんにく特有の匂いが口いっぱいに広がり、モチモチの皮が破れて溢れる肉汁がちょっとしたスープのように感じられた。

ぐぅーるるるるる……

あまりの美味さに食べながらお腹が鳴った。

「あひゃ、おーちゃん食べながらお腹鳴ってる！」

「余程相葉くんの餃子が美味かったんだね」

『えへへ、ホント美味しいよこれ』

言葉がすんなりと出てくる程の心地良さ。つい数十分ほど前までの気持ちが遠い昔の感情かのように、過ぎていく。それこそ、気づかないくらいに。

そうさせているのはこの餃子なのか、空腹から満腹への道筋だからなのか、それとも違う何かなのかは分からないけど今は何も考えずに今を生きたいと思った。

翔くんと相葉ちゃんと楽しく会話を楽しみながら腹を満たしていく。こんなに幸せだと感じること、最近はどれだけあっただろうか。いや、もしかしたら人生単位で思い当たらないかもしれない。

『「ご馳走様でした』」

あっという間に平らげた空のお皿に声を揃える。ご飯の美味さを生まれて初めて感じたような満足感でいっぱいになった。

すると翔くんはこんな事を言った。