アトリエに残された桜 (ページ29)

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さっきのも見られていたんだとしたら、全部バレているではないか。そう思ったら余計に恥ずかしさが増してしまった。どーも…なんて会釈をしながら受け取って誤魔化すように笑う。翔くんも同じかな、と思い翔くんの方を見ると

「うーん、こっちも美味しい～」

何も気にしていない幸せそうな顔をしていた。その様子に少し驚きつつ、そんなに気にする事じゃないのかなと俺も気にしないことにした。

気を取り直して翔くんが交換してくれたロールケーキを口にすると、これまたふわっふわな生地に生クリームがとても合っている。また、生クリームはフルーツの良さを引き出すような味になっていてクリーム自体の主張はそこまで強くないため、たっぷりとフルーツを楽しむことが出来る。

これは美味しい。
思わず顔がとろけるように笑顔になってしまうのも納得だった。

『このロールケーキも美味しいね』

「ね！こっちも美味しい！」

たまらなく幸せだと伝わってくるような満面の笑みを向けられて釣られるように俺も笑みが溢れる。皿を元に戻しながらコーヒーに手を付けると、口の中に広がっていた甘さを丁度良い苦味で緩和してくれた。

あー幸せだ。こんなに美味しいケーキとコーヒーを楽しみながらあんなに幸せそうな翔くんを見ることが出来て。

会話とケーキをたっぷりと楽しみ、ケーキが食べ終わる頃にはいつの間にか別の女性客が2組程現れていた。先程までいた2人組はいつ帰ったのか分からないが、彼女達よりも楽しんでいたことは自覚している。

美味しかったね、なんて話しながら会計を済ませ、店を出る。

「あー楽しい」

うーんと伸びをして翔くんが言った。

『うん、俺も楽しい』

こちらを見て翔くんが笑う。

「じゃあ、次はどこ行く？まだ時間は大丈夫だよね？」

『うん、今日は何も無いからね』

「いよっし！そうだ！食べた後だし運動しに行こうよ」

『おっ！いいよ～』

「決まりだね！どこがいい？」

まだまだ遊び足りない、とでも言うかのように俺たちはどんどんと行きたいところが思いついていく。行く場所が決まらないのなんて始めだけで結局いつもこんな感じで色んなところへ行っている。

『うーん、バッティングセンターとか行ってみようか』

「あ！楽しそう！行こう行こう」

ほら。すぐに決まった。
これで今日もたっぷりと楽しむ事が出来そうだ。