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角名倫太郎。 ページ7

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角名side


「これで良し…帰ろ」

教員に頼まれていた仕事を終え、鞄を持って帰ろうとした。

でも。

扉を閉め、階段近くを通った瞬間。バタバタと、激しい足音が聞こえた。そして。黒髪のショートカットが、揺れる。

「…え」

それは確かに、雨宮さんだった。

黒髪ショートカット。黒いセーター。
今まで見たこともない速さで雨宮さんが階段を駆け上がっていく。

こちらを見ることもなく、簡単に俺の視界からいなくなってしまった。

「なん、で…」

無性に気になってしまった。何か気になる点があった訳でもない。雨宮さんの、黒い髪の隙間から見えた肌なんて、一部しか見えなくて。

でも、それでも。

あんなに速く階段を駆け上がるってことは、それ程の何かがあるわけで。

もしかしたら、どうでもいい理由かもしれない。でも、それでも。

気になってしまった。

あと1階で、屋上まで着く。そこまで来て、思わず、足を止めた。

だって、そうでしょ?

まさか、思う訳がないじゃないか。
まさか、北さんの声が、雨宮さんの嗄れた泣き声と一緒に聞こえるなんて。

まさか。

静かな階段に、自分の名前が、響いて聞こえてくるなんて。


"……角名くん。"


確かに聞こえたんだ。雨宮さんが、いつもみたいに、俺を呼ぶ声。

俺はそこにいないはずなのに、何故か、一言、俺を呼ぶ声。

俺の名前を、雨宮さんが、掠れて、嗄れた声で呼ぶ声なんて、聞こえるはず、ないんだ。


"…なんや、雨宮。"


今度は、北さんの声だった。角名くん、と、俺の名前を呼んだ声に。

北さんが、返事をした。

嗚呼、北さん。北さんは、違うでしょう?雨宮さんが呼んだ人物では、ないでしょう?

何故、なぜ。

自然と、残ってしまったんだ。帰らなければならないのに、理科室に、わけも分からない義務感のようなものを感じて。残らなければ、何か大切な縁が切れる気がして。

自然と、理科室に、残っていたんだ。

なのに。

もう帰らないと、と教室から出て雨宮さんを追ってみれば、この調子で。

嗚呼、どうして。


"ごめん、なさ…!でも、いやだ、いや、離れて、いかないで…いやだ、いやだ!"


嫌でも聞こえてくる、雨宮さんの必死の声。俺の心を、刺す。

離れていかないで。

嗚呼、どうして。

雨宮さん、何故、北さんに俺の姿を重ねているの。

嗚呼、苦しい。

静かな階段。
あと一階で、君に会える。

そんな中、蹲って、俺は、声を殺していた。

銀島結。→←晴山ハル。



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作品ジャンル:恋愛
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか? (2023年2月25日 13時) (レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…?という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……! めちゃくちゃにやけました! (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん!! (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の「自分が嫌い」という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お水。 | 作成日時:2019年8月16日 11時

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