――――。 ページ49
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｢…雨宮｣
他に、誰もいない。
只、空を見上げて佇む北先輩が、そこにいた。
震える声も、手も、唇も。
全てを、奮い立たせろ。
｢卒業、ですね｣
｢なんや、寂しいんか？｣
珍しく、よく笑う。
揶揄うような表情が、あまりに綺麗だから。
消えてしまいそうで。
そっと、北先輩の手首を掴む。
｢…寂しくない訳、ないでしょ｣
だから。
｢…いかないで、なんて、我儘ですかね｣
寂しいから。離れて欲しくないから。
だからこそ、笑ってやる。口角を上げろ。
顔面なんて気にせず、歯を見せて笑ってやれ。
｢…雨宮｣
｢北先輩。
今から私が言うことは、多分、最後の悪あがきです。
きっと、北先輩の記憶に必ず残る、私の悪戯です｣
だから、聞いてくれませんか。
"ちょっとずつでええ。せやから昨日よりちょっとだけ、強い自分になってみい。"
ねえ、私。
――今日、何をする？
｢私、雨宮Aは。
…北先輩が、北先輩のことが。
苦しいくらいに、泣きそうなくらいに｣
息を、吸え。
｢…大好き、です｣
震えた、大好きの声。
目に映る北先輩が、揺れる。
涙が、溢れ出そうで。
好き、好きです。
北先輩、大好きです。貴方が、私のヒーローの貴方が。
大好き、なんです。
静かに、風が吹く。
髪を靡かせ、頬を撫ぜる風は、暖かくて。
何も言わない北先輩が、怖くて。
少し、下を向いた。
｢北先輩…？｣
不安になって、顔を、上げる。
そこには。
…真っ赤な顔の、貴方がいた。
｢…ちょ、待てえ。今、ダメや｣
｢あの、北、せんぱ｣
｢あー…、くそ｣
手首を掴んでいた手を、今度は逆に掴まれて。
そのまま、北先輩の方へと引かれ。
抱きしめられる。
｢…北先輩｣
｢…なんや｣
｢顔、見えません｣
｢…見んでええ｣
｢…見たい、です｣
｢…黙っとれ、あほ｣
頭の上に手を置かれて、北先輩の肩へと、顔を埋める。
クリーニングされた制服の匂いが心地好くて。
トクトクと高鳴る心臓が、もどかしい。
｢…俺も｣
耳元で、北先輩の声がする。
｢…俺も、Aが好きや｣
嗚呼。
幸せすぎて、死んでしまいそうだ。
｢…北先輩｣
｢なんや｣
｢…一緒に、頑張りましょうね｣
｢…A、｣
｢なん、ですか｣
"…はい。私も、北先輩となら、強くなれる気がします"
――俺、お前のためなら、強うなれる気いするわ。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
