燃える。 ページ42
.
｢はは、帰ってはよ乾かさんと、風邪ひくで、これはほんまに｣
そりゃそうですよ。だって、いくら雨の勢いが弱いとはいえ、ずっと雨に濡れてきた。
…それでも、北先輩は撫でるのをやめない。
｢…ひきたいです｣
｢阿呆。軽く言うもんやない｣
｢風邪ひいたら、助けに来てくれますか｣
我ながら、馬鹿なことを言った。涙が零れそうになるんだ、何故だか分かりはしないけど。
でも。
涙が、溢れるんだ、目から。
｢…なんや、目からも雨が降っとるなあ、お前は。安心せえ。俺は雨宮のヒーローやから。いつでも、助けたる｣
ヒーロー。
私の、私だけのヒーロー。
なんて思うのは烏滸がましいと知っている。独占欲だと分かっている。でも、分かっていたとしても。
私は貴方に憧れて。
貴方の生き様を、綺麗だと思った。
｢…頑張りました。私、頑張ったんです。ハルのこと、角名くんのこと、治のこと、侑のこと、銀のこと。
北先輩の、ことだって。
私、今、初めて…今、やっと、ようやく…！
自分がしてきたことを良かったと、自分が今までしてきた行いを、信じることが出来た！
肯定出来た！私は、私のできる限りが出来たと、本気で、思えた…！｣
自分を、信じることが出来た。
心が温かい。北先輩、北先輩のおかげで、私は自分を信じることを学んだ。
自分が嫌いだった。自分が嫌いなフリをして、結局自分が大好きな自分が嫌いだった。…そんな私が、大嫌いだった。
でも。
｢自分を、好きになれたか｣
ころ、ころ。
ぽたぽた。
ぽちゃん。
じわり。
｢はい、はい…！私、私は、私を好きになれた…！北先輩のおかげなんです、全部、全部！
やっと、成長出来た。やっと、やっと…！雨宮Aに、なれた気がして…！｣
変なことを言っている。
自覚はあった。でも、実感はなかった。
変なことだと分かっていても、本気でそう思ったんなら変えられない。
お母さん、ごめんなさい。この顔に産んだことをずっと心の中で咎めていた。
お父さん、ごめんなさい。私の卑屈は父親譲りだと、勝手に決めつけて。…いや、そう思いたかった。性格の悪い自分が嫌いだった。
｢大丈夫。お前はちゃんと、雨宮Aや。顔なんて、関係あらへん。
雨宮Aは、雨宮Aや｣
その一言が、私をどれだけ肯定するか。
私はちゃんと私で良いのだと、認められた気がして。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1277人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
