うん。 ページ32
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「ありがとう、治。角名くんに、伝えてくるよ」
「おん。それでええねん。それがええねん。雨宮Aは、そうやないとな…!」
ニカッと笑う治の笑顔が、少し腫れた彼の目を隠した。
辛かったんだろう。苦しんで、告げずに少しずつ吹っ切る形をとったんだろう。
なのに。
私を、応援してくれる。
その笑顔に答えるように、私も、思い切り笑った。
昼休み。
「…角名くんいますか」
二年一組。ハルとは別の友達と弁当を食べ終えドアの前で角名くんを呼ぶ。
ただ呼ぶだけなのに何故か緊張してしまって。
フラれてから、まともに話すのは久しぶりだ。
どうしよう、どんな顔でいようか。
…まあ。
"雨宮は、俺のヒーローやな。"
ヒーローのヒーローが、そう言ったから。ヒーローは、笑って、助けるものだよね。
少し、口角を上げて、角名くんを探す。あの長身。すぐに見つけられる…はず、だったんだけど。
「雨宮、角名なら今出てったわ。イヤホン探しに行く言うて、屋上近くまで」
治の声が響く。
呑気にパンを頬張るそいつに目を向ければ、頑張れ、とでも言うかのように笑って親指を立てられた。
…うん、大丈夫。
「了解。あんがと」
二年一組のドアから飛び出して階段を駆け上がる。
三年生の教室前まで来て、誰かとぶつかる。
「あ、すみません、急いでて」
「おー、大丈夫や。気いつけてな」
気の良さそうな人で、バレー部がクラスにいるからか低身長と勘違いしてしまう。けど、大分平均身長。
さけるチーズ片手にヒラヒラと手を振る…え、
「赤木、さん」
よく試合応援に行くとリベロをしている、赤木さんがいた。いや、赤木さんなんて呼んでるのは知り合いとかそういう訳じゃなくて。
だから
「…え、なんで知っとるん?」
こうなる訳で。
「あー、いや、吹部所属なんです」
「なるほど。怪我とかせんかった?」
「はい、大丈夫です。赤木さ…赤木先輩は、大丈夫ですか」
「はは、赤木さんでええよ。そっちのが慣れてん。ほな、またな、雨宮さん」
…え、名前、なんで。
「うちのクラスの吹部がよう自慢してん。努力家の後輩がおる言うて。機会があったらまた話そな、雨宮さん」
…なんだろう、少し前に知り合ったばかりなのに、この、癒される感。バレー部はくせ者揃いだと思ってたけど、案外違うのかな。
「はい。ありがとうございます」
そしてまた、急いで階段をかけ上る。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか? (2023年2月25日 13時) (レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…?という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……! めちゃくちゃにやけました! (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん!! (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の「自分が嫌い」という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年8月16日 11時