スタートライン。 ページ27
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｢…北先輩｣
北先輩の手を引いて、立ち上がる。
そのまま、私よりも高い綺麗な目を見て決意を固める。
単純に、この人みたいになりたいと思った。
生まれて初めて、ここまでの憧れを抱いたと思う。上手い奏者とかは抜きにして、人間としてこの人みたいになりたいと。
そう、思った。
｢なんや｣
｢…ハルと、もう一度話そうと思います。このままじゃきっと後悔する。未来になって、自分がやってきたことを信じられなくなるから｣
北先輩に言ったのは、逃げないため。自分の中で意志を固めたままだと、きっと辛くなったときに逃げ出すから。
そんな自分、もう嫌だ。
胸を張って、信じられる自分でありたい。
自分を頼って信じること。それを自信と言うから。だから私は、自分に自信を持ちたい。
｢…それがええ。俺は、ハルには何も言わんことにする。
終わっとる恋を告げてもしゃあないし、今までを後悔しとる訳でもない。せやから、俺はハルには何も言わんと、ただ見守るだけになるけど。
雨宮が辛うなったら相談せえ。いつでも相談乗るさかい｣
…かっこいい。
これを笑顔で言えてしまえる北先輩が、特別にかっこよく見えてしまった。
トク、と鳴り始めた心臓は、きっと単なる憧れに過ぎないけれど。
でも。
｢…はい。ありがとう、ございます｣
…こんな風になりたい。
｢俺も、おおきにな。雨宮のおかげで、情けない自分にさよならが出来たわ。
雨宮は、俺のヒーローやな｣
ヒーロー。
え？
ヒーローって、人を助ける、あの？
｢…じゃあ｣
――じゃあ、もし、もし私がヒーローなら。
目の前で笑う北先輩に、目じりを下げて、久々に思いきりの、満面の笑みをうかべる。
｢北先輩は、ヒーローのヒーローですね｣
｢…ヒーローの、ヒーロー？｣
｢はい。いつも私を助けてくれます。私がもしヒーローになれるなら。
北先輩は、そんな不甲斐ないヒーローでさえ救ってしまう、ヒーローのヒーローです！｣
北先輩が、息を呑む音がする。暗がりの中、北先輩の背後に、月が映る。
…綺麗だ。
何も言わず、目を丸くして私の方を見る北先輩を見つめる。
でも、何も言わないから。
｢北先輩｣
と呼びかければ、あ、と返ってくる。
｢ほな、頑張ってな、ハルのこと｣
｢…一緒に、頑張りましょ｣
｢…おん｣
月明かりに照らされるヒーローを、家の前、影が見えなくなるまで見つめていた。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
