知らないうち。 ページ23
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「…それは」
「俺は、俺は…?俺は、どうすればええんや。ハルが好きや。でも、手を伸ばせば届くはずやったその人は、いつの間にかおらんかった。
全部、いつの間にかや。
なんで、なんで…!気付いたら自分だけ立ち止まって、ハルのことが好きな心を捨てきれずにここにおる!
なんで、なんで…!なんで、俺だけ!
分かっとる、自分が変わろうとせんかったからやって分かっとんねん。でも。
どないすればええんか、分からんよ…なあ、雨宮。
俺、どうすればええ。俺はハルが好き。なのに、いつの間にかその気持ちが重くなったり軽くなったり、不安定になって。
今は、もう。
ハルをほんまに好きなんか、分からんくなってもうた…!こんな、こんなはずやなかったんや。ちゃうねん。こんなんや、ないんや。
なあ、助け、助けてえな…!自分でも、よう、分からんねん。怖い、怖くて、どうしようもない…!!」
北先輩が泣いている。どうすればいい、北先輩が、今まで抱えていた分を吐き出しながら泣いている。
「北先輩、大丈夫、大丈夫です」
何が?何が大丈夫なの?しっかりしろよ、私。こんな慰め方、私だったら絶対にして欲しくない。
完全に絡まってしまった片想いが、目の前に転がっている。
ここまで絡ませたのは。
紛れもない、私。
「…大丈夫、ですよ、北先輩。私が、私がいます。ハルではないし、代わりにはなれないけど。でも、私が。せめて、北先輩の悩みくらいなら聞けます。大丈夫、大丈夫です」
あなただけではないと教えてあげること。自分だけの世界に囚われないでと、諭してあげること。
これぐらいしか出来ないけれど。
でも。
本当に困っているときの周りの存在は。その人の人生を、大きく左右するから。
髪を撫でていた手に、力を込める。頬に手を当てて、摩る。これくらいしか出来ないんだ。でもこれなら、
これだけが、私に出来ることだから。
「は、る…?」
誤作動を起こす北先輩を、必死に撫でることしか出来ないんだ。四十五度で叩くなんて、そんなことは出来ないから。
せめて、早く直ってくださいと撫でることを、出来ることをしたいから。
「違います、雨宮です。雨宮Aです。北先輩、よく見て。北先輩の目の前にいるのはあなたの好きな人じゃありません。
あなたの好きな人は、もう、手の届くところにはいないんです」
悲しく、残酷な現実を。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか? (2023年2月25日 13時) (レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…?という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……! めちゃくちゃにやけました! (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん!! (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の「自分が嫌い」という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年8月16日 11時