悲しい叫び。 ページ22
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｢あ、れ。なんやろ、すまん。あれ…？おかしいなあ、悲しくなんて、ない、はずやのに｣
自分よりも上にある北先輩の涙が、至近距離の私の目の下に、零れ落ちる。
…ぽたり。
ぽた、ぽた。
…ぽろ、ぽろ。
ひゅー、ひゅー。
あれ。
おかしい。
北先輩が泣いている。それを、確かに私は見ているはずなのに。
誰よりも近い距離で、見ているはずなのに。流れる涙の温度を、その冷たさを感じているはずなのに。
…あまりの儚さに、見惚れてしまう。
丸く大きな瞳に、水の膜が貼られて。その膜は厚みを増して。目尻から段々と、丸みを帯びて。
粒となって、私の頬へ降る。
｢…きた、せんぱ｣
何とかしないと。その考えだけは正常に回った。震える唇を無理やり動かして、情けない声を出す。
でも。
目の前の北先輩が、私の口へ、手をやるから。
声に出してはいけないと、感じてしまった。
｢…堪忍な｣
謝るくらいなら。そんな嗄れた声で謝るくらいなら、どうして私の口を塞ぐんですか。
慰めすら言わせてはくれないんですか。…慰めすら、されたくないんですか。
今、何を思って泣いていますか。
誰を想って涙を流していますか。
その答えなど、知っているのに。
手の冷たさが。涙の冷たさが。北先輩の存在を今にも無くしてしまいそうで。
そっと、北先輩の髪を撫でる。
…嗚呼。
｢…北先輩も、サラサラじゃないですか｣
綺麗な髪だ。夜空に揺蕩う髪が、月の光を浴びて光っている。
丸い月。北先輩の瞳と重なる。
｢綺麗な、髪ですね｣
笑ったつもり。北先輩の手に阻まれ籠っている声が、北先輩に届いていると良い。
｢…おおきに、なあ｣
何を思って泣いたのか。それは、私には分からないけど。誰を想って泣いているのかは、多分、合っていると思うんです。
更に量を増した北先輩の涙が、私の瞳へ入る。
驚いて咄嗟に目を瞑る。
目薬の感覚。
また、そっと目を開ければ。
北先輩が、涙を蓄え笑っていた。
｢…吐き出しても、良いんじゃないですか｣
――捌け口、なりますよ。
｢……俺、は｣
｢はい｣
｢ハルが、好きで｣
｢……知ってます｣
｢でも、いつの間にか、侑のもんで｣
｢…ですね｣
｢知らんうちに、皆、前に行ってもうた。好きな人は振り向いてすらくれん、侑はその隣で笑っとる。
角名も、治も、銀も、皆、前を向いとるのに。
なら、俺は…？
ずっと、ハルを好きでいる｣
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
