カミングアウト。 ページ29
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「フラれて…?」
目の前の二人が、真剣な面持ちでこっちを見る。
フラれてきた。
その事実が、どうにも喉を通らない。受け付けない。でもどこか、安心してしまっていた。
"ほな、一緒に頑張ろか。"
「…そっか、うん。えっと。あー…、頑張った、ね」
後頭部に手を置いて、髪が崩れるのも気にせず掻き混ぜる。どこか照れくさくもあって、その理由も分からなくて。
でも、なんか。
頑張ったね、っていうのは上から目線な気もするけど、相手を認めるには良い言葉。
どう、なんだろう。目を逸らしているから、相手の反応が見えない。
どんどん小さくなってしまった声。感じ悪く思われたかな。沈黙やめて、なんか言ってよ、こっちだって色々恥ずい。
いや、なんでこっちが恥ずい?うわー、もう、何が何だか分かんない。チラリ、と侑と銀島を見上げる。目を丸くしている二人が、口をポカンと開けたままで私を見ている。
え、何。蛇に睨まれた蛙状態ですよ?え、何なの、嫌だよ何なの。
「あのー…お二人さん?」
「…あ、お、おん。なんや、変に照れ隠しせんといてや。でも、雨宮に褒められたん初めてとちゃうか?」
「んな訳あるかい。銀島を褒め讃えたことくらいあるわ」
「…ほんま?」
「…ほんと」
相変わらず侑は何も言わなくて、ジッと睨んでいれば、ようやく口を開いた。
瞬間、笑い声が響く。
「おま、なんやねんいきなり!頑張ったねとか、褒めんの下手すぎやろ!おも、おもろ…!」
腹を抱えて笑い転げる侑にイラついて、机の隙間から侑の脛を蹴る。
「いだ…!」
「自業自得やな」
「人が折角褒めたのに何なのあんた!ほんと何なの!」
脛を押さえ唸る侑にため息を吐き、んで?と話の続きを促す。
「…俺が改めて告って、フラれたとき。ハルが妙に落ち込んどってな。途中銀も合流して、銀も告って。泣き出してもうてなあ、ハル。話聞けば雨宮となんかあったいうから」
…嗚呼、そういうこと。
「助言、してくれたの?」
「…言うたやろ。雨宮には世話んなったし、助言なんてもんやない。ただ、」
「…ただ?」
侑が口を噤んだところで、今度は自分の番、とでも言うように銀島が口を開く。
「"雨宮は、本心から友達にならん方が良かったなんて言う奴やないで。…優しい奴や。"
って、言うただけや」
ニンマリと笑う銀島と、目を逸らしつつも笑う侑が、視界に映る。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか? (2023年2月25日 13時) (レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…?という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……! めちゃくちゃにやけました! (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん!! (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の「自分が嫌い」という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年8月16日 11時