人は、誰かを下に見ないと生きていけない。 ページ40
.
侑side
雨宮に手を繋がれたとき。
恋人繋ぎとかいうやつだったことに、少し
驚いてしもた。
部活を頑張っとるからやろうか。
日々動かしている指が固くて。
柔らかくもなんともなかったけど。
それでも。努力が伝わる指だったことは、
充分に伝わってきたんや。
悔しそうな顔をして。
角名と、晴山。……いや、角名だけを見つめて。
全力で走って、二人の間に入った。
無理に引っ張られて少し痛んだ手を離されて、
急に、後ろから押された。
って、いやいや、力強すぎん？
なんて思いの外冷静な頭は、相変わらず機能に
欠けとって。
そのまま、晴山の方へ、倒れる。
危ない。そう思うたけど。
バレー部とは思えんくらい女子らしい、華奢な
身体を、ひしと、抱きしめとった。
思考回路再起動まで、5秒。
心臓がうるさい。
すぐ前の家の、コンクリートのフェンスに、
晴山を追い込んどるみたいになって。
なんや、この、少女漫画的展開、なんて。
胸板らへんに埋まる晴山の顔が見とうて。
でも、謝らなあかんと思うて。
思考回路が、グチャグチャで。
｢……あ、つむ？｣
可愛らしい声。
愛しい。どうしようもなく。
｢……堪忍、な｣
離れなあかんことを恨んだ。
もうちょい、このまま。なんて、言いたかった
本心を隠して。
そっと、手を、離す。
｢いかん、といて｣
何が、起きた？
晴山の手が、俺の背中に回って、優しいくらい
の力で、そっと、抱きしめられとるのを
感じる。
嗚呼。ダメや。
真っ赤に耳を染めた晴山が。
どうしようも、なく。
愛しい。
｢……好きやで、晴山｣
｢……ん｣
｢返さへんのは、狡いんとちゃう？｣
｢……ん｣
｢なんで、何も言うてくれへんの｣
お願いやから。
好きやと言うて。
一言でええんや。せやから。
角名への嫉妬で狂いそうな俺を、安心させて。
｢……ごめん｣
その言葉が、欲しかったんやない。
お願いやから、好きやと、言うて。
｢うちは、まだ……｣
困らせとる。
嗚呼、困らせとる。
｢……ええよ。すまんかったな、ほな、帰ろか｣
背中に回った手を、握って、そのまま、
歩き出す。
自然と手を繋げた。
このことに、喜ぶべきなんやろうと思うた。
でも。
好きやと言えへんなら、なんで。
なんで。
" いかん、といて……。"
暗くなった道。
月が、雲に隠れる。
晴山を、家まで、送り届けて。
勢いのまま。
唇を、重ねる。
ドサリ。
地面に手をつく。
嗚呼。
突き飛ばされた。
涙のあとって実際そんなに残らない。→←キャラメルも捨てがたいけどやっぱ王道の塩も良いよね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1651人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏 - 人間の感情が素晴らしく良く表現されている作品だと感じました。幸せになる人の裏に不幸になる人がいる世界を上手すぎるくらいに表現されていて、読んで感動しました🥹 (10月24日 18時) (
レス) @page50 id: f137f47347 (このIDを非表示/違反報告)
フェアリー(プロフ) - なんというか･･･切ないですね。夢小説なのに夢を感じさせないところが好きです。ハルちゃんが誰かに愛されている裏で、雨宮ちゃんの心が抉られているって考えると居た堪れないっすねなんか (2023年3月23日 17時) (レス) @page50 id: ebc545326a (このIDを非表示/違反報告)
黒弧(プロフ) - バカ笑いと、何とかってやつで言いたいことがある。。北さんイケメン！？で、私はこうゆう女の子の逆ハーが雨宮(？)目線で見てまうからいっつも男主 (2022年9月29日 7時) (レス) @page32 id: 4b13e88e37 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらゆな(プロフ) - 今まで愛され夢小説を見てきて私も作者さんと同様友達はどんなふうに思っているのか、不憫だなと現実にいたら私もきついかもです笑笑この小説を読んでいかに愛され小説が自分達だけの世界だったのかと思い知らされます、続きも全部読みました、とても感動しました！ (2022年5月26日 21時) (レス) id: 047d519d35 (このIDを非表示/違反報告)
まくら - なんやろなぁ、小説特有の甘い感じじゃなくてちゃんと現実でのドロドロした、めんどくさい恋愛が書かれててほんまに凄いと思いました。続き、今から読ませていただきます。 (2022年4月27日 23時) (レス) @page50 id: c8a7cb4466 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お水。
| 作成日時：2019年1月1日 0時
