きゅう ページ9
「あ、」
『あ、スマイルくん』
図書館で忙しなく働いていた先輩が、俺をみてにんまりと笑う。
手に抱えていたたくさんの小説をどさりと机に置き去ると、走り寄ってきた。少しだけ、犬みたい。
『ちょうどスマイルくんのおすすめしたい本があったんだよね』
「あ、いや…今日はこれを届けにきて…」
『!私のノート…!ありがとう!助かった』
慌ててパラパラとめくり、自分のものだと確信した先輩は、きゅっと抱きしめる。
「…すごい大事にしてるんスね」
『そう。これは、今まで読んだ本…というか最近読んだ本の感想を書いてるノートなんだ。その時思ったことを書き留めておいて、例えば読み直した時とかに、考え方違ったなーって見返すために』
我ながらいいものだと思ってるよと愛のこもった目でノートを見つめた先輩。それをみてしまったことの少しの罪悪感。
口をぱくぱくとして、言おうか言わないかと悩んでいると、先輩が伺うようにこちらをみた。
『もしかして…みた?』
「………はい」
『…まじかー…まあ、スマイルくんになら見せても、いいか』
俺になら、って?と首を傾げると、君なら私の感性をわかってくれそうかなって思ったからと眩しい笑顔で笑う。
眩しかった。俺の罪悪感をジリジリと焦がして消していくような純粋な笑顔だった。
(…ちょっと、変な先輩)
文体や筆跡なんかで、人というものはわからないんだなとぼんやり考えた。
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ふぽ(プロフ) - 白瀬。 掛け持ち中〜さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2022年12月28日 0時) (レス) id: c0d0822338 (このIDを非表示/違反報告)
白瀬。 掛け持ち中〜(プロフ) - コメント失礼します。ランキングからチラッと覗いて見たくらいの興味本位だったのですが、スマさんの良さが全面に出されているうえ、話の展開も面白く続きがすごく気になります…!同じ小説を書いてる身として尊敬しかないです。これからも陰ながら応援しています。 (2022年12月27日 12時) (レス) @page15 id: fce1309fe8 (このIDを非表示/違反報告)
ふぽ(プロフ) - mdk32さん» ありがとうございます。ゆっくりではありますが必ず更新致しますのでお待ち頂けると幸いです。 (2022年12月8日 0時) (レス) id: c0d0822338 (このIDを非表示/違反報告)
mdk32(プロフ) - このお話すごく面白い!一話から面白そうな雰囲気が…!続き楽しみにしてます!! (2022年12月6日 18時) (レス) id: 029c193521 (このIDを非表示/違反報告)
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