【sm】透けた文字の向こう側【WT】

ろく ページ6

図書館に行こう。そう思い立って、図書館に向かえば生憎休館日。司書教諭が休みらしい。

仕方ない、家で本を読もうと引き返そうとした時。

『あれ？この間の…』
「あ…」
『やっぱり。ねぇ、この間の新刊読んだ？』
「まぁ、一応…」
『！！感想言える相手いなかったんだ。ちょっと付き合ってよ』

同じく図書館に行こうとしていたらしきあの人にたまたま会った。かと思うと連れ去られてしまう。

ずんずんと向かった先は、放課後で誰もいない教室。どうぞどうぞと言われてとりあえず腰掛ければ、この間の新刊が置かれ、その横にノートが置かれる。

『…でこの間の新刊の話なんだけどまず主人公がめちゃくちゃ良いんだよね。あとさ、2章の展開がすっごい良かった。考察捗っちゃったしそれで…』

すごい速さで捲し立てるその人。俺はその向かいで呆気に取られるしかなかった。

一度止まったところでおずおずとあの…というと、はっとした顔で恥ずかしそうに目を逸らした。

『ごめん…本のことになるとテンション上がっちゃうんだ』
「いや…全然いいんですけど…」
『待って、自己紹介もしてないね。3年のAです』
「あ、スマイル…です」

何に驚いたって想像以上のマイペースさ。うまく話さないと向こうのペースに飲み込まれる。

「えっと…」
『…まじでごめん。一気に話しちゃった…話せる人いなくて』

しょんぼりと下がる耳が見えた気がする。意外と表情に出やすくて、少しだけ、本当に少しだけきゅんとした。

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