白いキャンバス (ページ2)

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「おはよう、樹。」

…寝癖ボッサボサの髪で、起きてきた。

3日連続、俺の負け。

「またタバコ吸ってたの？」

体によくないからやめてほしい、確かジェシーはそう言ってたけど。

「別に良いじゃん。俺の勝手。」

いつもと同じような返答に、ジェシーが黙り込むまでが、1セット。

「…ここからさ、」

寒いベランダで、沈黙を破ったのは、俺の方。

「ここから落ちたら、死ぬ、よね。」

俺は下を見ていてわかんないけど、きっとジェシーはこっちを見ている。

ジェシーの行動が、手に取るようにわかるなんて、な。

「……死にたいの？」

横を見ると、ジェシーはもう柵に寄りかかって、下を見ていた。

「…そう言うわけでは、ない、かな。」

「………そう。」

ここで、会話終了。おしゃべりなジェシーが、こんなに喋らないのも俺といるときだけだよね、なんて。

タバコの灰を落として、赤と青が交じった空を見る。

「もし、」

不意にジェシーの綺麗な声が、鼓膜を揺さぶる。

「もし、死ぬなら、」

まだこの話続いてたんだ、なんて頭の端で考えて。

「…俺は、樹とがいい。」

まっすぐな目に捕らわれて、時がとまったような感覚に襲われる。

「…っだよ！やだよ。野郎が2人で死ぬとか、気持ちわりい。」

俺は結局、その視線に耐えきれなくなって、本音とは裏腹な言葉を吐き出して。

……きっと俺の顔は、真っ赤なんだろう。

そのたびジェシーは、あの独特な笑いで、笑い飛ばしてくれるんだけど。

「良いじゃん。好きなんだから。俺は死ぬときも、死んでからも、樹とがいいよ。」

そう、恥ずかしげも無く言ってのけるから、俺の心は持たなくて、

「っ知らねー。俺もう戻るわ。」

雑にタバコを灰皿に押し付け、まって、という声も無視して、朝飯の準備を始めた。

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