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「神さん？」
「そ、神さん」
可愛い呼び方だなあ、なんて思う。
信介のおばあちゃんが言うらしい、「神さん」。
私は神さんにいつか会いたい。こういう呼び方をしていると、会えるような気がしてくる。
「言いたいの」
腕の中、信介にぎゅっと身を寄せた。
「信介と出会わせてくれて、ありがとうございます、って」
「⋯⋯せやな」
やわらかい声色で、信介は言う。
「俺もいいたいわ。Aと会えてよかった」
「⋯⋯ほんと？」
「うん」
私は体の向きを変えて、寝転がったまま信介に正面から抱き着く。
「やっぱり死にとうないなあ」
「せやな」
「信介と一緒にいるほどお別れが重い」
「会わんほうが、よかったか？」
「⋯⋯そ、」
そんなことない！
ぱっと顔を上げて、でもそれ以上なにも言えなくなった。
「信介⋯⋯、大丈夫？」
「え、」
「涙⋯⋯」
目の端にふれ、はっと気づいたように信介は涙を拭う。
「せや⋯⋯、別れとうないな」
もう一度ぎゅっと抱き着くと、先ほどよりも固く、抱きしめ返された。
「ね、信介」
「ん？」
「こうやってずっとくっついてようよ、一生分」
ふっ、と笑い声がする。
「お前に会えてよかった」
胸の奥がじんと熱くなる。
「やめてよ、まだ死なないんだから」
そう言って信介の胸に顔をうずめる。
「結果のために行動しようと思ったん、Aだけや」
「うん」
「一緒にいたいと思って、副産物じゃ済まんくなった」
「そっか」
「手放したくないな」
「うん、大好き」
私だって。
この時間をずっと抱えたままでいたい。
どうせ世界が終わるなら、このまま永遠になってしまいたい。
「あのね、私、今確信したん」
顔をあげてまっすぐ、信介を見詰める。
「私、幸せだ」
テレビの液晶は相変わらず黙り込んで、この世界には他に誰もいない。
世界の片隅、コタツに潜り込んだ私たちは、いつか来る終焉をすでに予期している。
となりには、愛する人。
「俺もや」
静寂の中。
「幸せやな」
私たちの未来に夢がないことは、私たちが一番知っている。
ささやかで温かい愛がいつ消えてしまうかは、分からないままで。
それでも。
「信介がいてくれてよかった」
出会えたことを、取り残されたことを、
恐怖を、恋しさを、切なさを共有するのが彼であることを、
不幸だなんて、思わない。
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ティラミルク(プロフ) - Decemberさん» 描いた情景が暗かったので、そこに少しでもと織り交ぜたささやかな幸せは私の理想の形でもあります。世界が終わるとしたら北さんとがいいなぁという妄想もたっぷり込めまして(笑)素敵だなんてもったいないお言葉！こちらこそ嬉しいコメントをありがとうございました。 (2020年5月14日 23時) (
レス) id: c7232f3a98 (このIDを非表示/違反報告)
December(プロフ) - コメント失礼します。何だかホクホクしました(泣)「このまま永遠になりたい」って台詞すごく好きです！作者様、素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月14日 16時) (レス) id: 8a83f8152c (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - が―どれ―るさん» ありがとうございます(*^^*)相変わらず他人行儀なコメントですこと(笑) (2019年11月23日 15時) (レス) id: 9b0bde0b73 (このIDを非表示/違反報告)
が―どれ―る - なんだか、珍しい感じのするお話で驚きました。嫌いではありませんよ、こういったお話の進め方は。 (2019年11月19日 17時) (レス) id: 94b32e65aa (このIDを非表示/違反報告)
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