25日 ページ15
むかしむかし、といってもほんの一年前の事なのだけれど。
街は高らかな音楽と一緒に、装飾が施された店が立ち並ぶ。
その中を白い息を出しながら俺とAが並んで歩いていた。
『うわー寒いね』
「もークリスマスだしな」
今日は12月25日。
なんだか、カップルはこの日にそういうこともするらしいーーとフジが言っていた。
俺とAが付き合ってからもう少しで一年が経つ。
そのような事は俺がビビってるせいで雰囲気が良くなっても直前でやめてしまう。
流石に、Aには聞けないしーー
はーっ、と深くついた息は淡くその場に残ってからふっと消えてしまった。
***
今日は、俺の家でささやかな二人だけのクリスマスパーティーである。
寒い中街に出たのも、二人分のケーキを買って食べるから。
ロウソクの光は意外と小さくて、お互いの顔もぼんやりとしている。
『けっこー、暗いね...』
点ける?と苦笑が混じった声で言われて、反射で俺が点ける、と席を立った。
照明のスイッチを手当たり次第に探してみる。
なかなか見つからずに、探す手も段々乱雑になってきた。
その時、Aの座っている椅子に手がかかってそのままひっくり返った。
「うおっ!」
『うわぁ!?』
どたーん、と大きな音を立てて二人とも崩れ落ちる。
柔らかい重みとふわりと広がったAの髪の香りで俺がAを押し倒していることがわかった。
とにかく、起き上がろうと腕を持ち上げて床につこうとした。
「ん?」
ふに、とした何やら気持ちいい触感が俺の両手の指を包んだ。
例えるなら、肉まんのパンみたいな柔らかさ。
それも、かなりある。
何度か確かめようとしたところで俺の体がドンと、後ろに押し出された。
そして、ドタドタとした足音も。
ぱっとついた照明でようやくAの顔が見えた。
これでもかと言うほど真っ赤な顔。猫みたいに威嚇して、両手は胸を押さえているーー
そこで、ようやく俺は自分のしてしまったことの重大さに気付いた。
両手を何度か空中でグーパーを繰り返したあとなるべくの笑顔でAに話す。
「や、やぁ」
『さいってー...』
いつにない冷徹な声に身震いする。
俺はなんとか場を和ませようと頑張った。
「いや、Aも意外とある...」
その刹那、パシィンと音を響かせて俺の頰が紅葉型に赤くなった。
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ふくふく(プロフ) - 佳奈さん» コメントありがとうございます!更新遅れちゃって申し訳ないです、これからまた頑張ります (2019年8月1日 6時) (レス) id: 2cb58a5535 (このIDを非表示/違反報告)
佳奈(プロフ) - 死にます。マジで。更新頑張ってください!! (2019年7月23日 10時) (レス) id: 126972c2b9 (このIDを非表示/違反報告)
ふくふく(プロフ) - 碧さん» ありがとうございます!楽しんでもらえて嬉しいです〜!更新頑張りますね (2019年7月4日 21時) (レス) id: 2cb58a5535 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - とても面白いです!執筆頑張ってください! (2019年7月4日 20時) (レス) id: 44684bfe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふくふく | 作成日時:2016年12月7日 22時