第二イベント �� ページ12
ズズ、と音がしてハッと飲み物の容器を見てみると何杯目かのオレンジジュースが底をついていた。
時計を見てみると、一般会場の開放にはまだまだ時間がある。
『やっぱり残ればよかったかなぁ』
はぁー、とこちらも何度目かのため息をついてからおかわりをしに席を立つ。
かれこれ、ファミレスに来てから30分も経った。
一時の羞恥心で、ずっとそばにいたい彼のもとを離れたのは自分なのでどうにも戻りづらい。
『会いたいなー』
そう呟いて、スマホに指を走らせる。
ーーキヨ、やっぱり戻っちゃダメかな
決死の思いでかいた文は何分経っても既読の文字がつかず、私はそのまま席を立った。
『うわ、人多い』
予想の数倍の人の多さに息を飲んでから、ちらほら聞こえる会話が耳にはいってくる。
「今日、キヨ来るんでしょ？私絶対行く！」
「私もキヨマジで大好き」
キャッキャと喋る女子達の横をすり抜けて誰もいない何処かに抜けようと人混みをかき分けた。
この会話から分かるように私とキヨの関係は公表されてない。
本当は、イベント前の会場に入るのも遠慮してしまいたかった。
自分だけ、嘘の下で好きに動いてるのはどうしても辛かった。
だから、今も何かに溺れないように、何もないところを無意識に探していた。
『あ、ここって...』
彷徨うように歩いていたら、いつの間にか全身ラジオと大きく書かれた看板の前まで来ていた。
いつも、こうしたイベントに来ると私はキヨのイベントを見て、キヨは誰にも気付かれないように私に笑顔を向けた。
その笑顔が本当に嬉しかったけれど。
私はバッグから、マスクとニット帽を取り出してしっかりと身に付けた。
ばっと、辺りが暗くなってイベント開始の合図がはいった。
「それでは、二人に登場してもらいましょう！」
耳をつんざくような歓声にまみれながら私は小さくエールを送った。
キヨ、頑張れ
いつも、こうしてエールを送ってる。
キヨが気付いたことは一度も無かったので半ば、私の自己満足でもある。
「うぃーす、キヨです」
「こんちゃーす！レトルトです」
お決まりの話し方で始まった全身ラジオはやっぱり面白くて、会場は大盛り上がりをみせた。
「あのさ、レトさん」
「どうしたん？」
「秋じゃん？んで、ハロウィン近いからさ」
ふふん、と自慢げに笑う彼。
「俺が、怪盗となります！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふくふく(プロフ) - 佳奈さん» コメントありがとうございます！更新遅れちゃって申し訳ないです、これからまた頑張ります (2019年8月1日 6時) (
レス) id: 2cb58a5535 (このIDを非表示/違反報告)
佳奈(プロフ) - 死にます。マジで。更新頑張ってください！！ (2019年7月23日 10時) (レス) id: 126972c2b9 (このIDを非表示/違反報告)
ふくふく(プロフ) - 碧さん» ありがとうございます！楽しんでもらえて嬉しいです〜！更新頑張りますね (2019年7月4日 21時) (レス) id: 2cb58a5535 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - とても面白いです！執筆頑張ってください！ (2019年7月4日 20時) (レス) id: 44684bfe2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふくふく | 作成日時：2016年12月7日 22時
