ハートの国と余所者�� ページ9
「わ、私知らなくてですね。大きいお屋敷だな、と見ていただけですよ？」
私が乾いた笑いを漏らしながら言うと、彼らは混じりけのない笑顔を浮かべ、恐ろしいことを言
いやがりました。
「怪しい人は殺さなくちゃ」
「そうそう。それに、僕ら、退屈だったんだ。遊んでよ」
「今なら無料で殺してあげるよ」
わ、私の夢、こわっ。
私が思わず一歩後退さると、少年たちは距離をつめて、シュンッと斧を大きく振りました！ でも隙は見当たりません。それだけ門番としての訓練を受けてきたのでしょうか。
間一髪、怪我はありませんでした。けれど……。
「ふふふふ」
いきなり笑い出した侵入者を、いぶかしげに見つめる二人。
「どんな教育を受けてきたんだか……。人の命は、粗末にしてはいけない、と教わりませんでしたかあ？」
にっこりと、聖母のような慈愛に満ちた微笑みを向けると、二人は怯えたようにぶんぶんと首をふりました。
「そうですかあ……。これはお仕置きが要りますねえ」
私は常備している調理道具セットの中から、お気に入りの包丁を抜き取り、もう一振りしてきた彼らの斧を二本の包丁で受け止めました。
「う、嘘だろっ」
「……っ！」
それが予想外の反撃だったのか、青い服の子のほうが私の後ろに回りこみ、上から攻撃を仕掛けようとしました。もちろん、そんなことは予想済みです。私は横にとび、赤い服の子との接触を誘いました。
「えっ！ 兄弟っ！？」
案の定引っかかり、思わず、といった様子で慌てて斧を引っ込めます。
そして二人は前につんのめり、へたり込んでしまいました。
力の差は歴然ですね。実戦経験は彼らのほうが多いようですが、技術は私のほうが上ですよ。
「……もっとお仕置きされたいですか？」
ぶんぶんと首を振り、私から背を向けると、
「このお兄さん強いね、兄弟」
「こうなると、もっと怪しいよ、兄弟」
「……やっぱ……殺……」
「……拷問で…………して」
向かい合ってこそこそと話し合う二人。不穏なセリフが漏れ聞こえます。
い、いやあ、だけど、一時のテンションに身を任せちゃいけませんね、いやほんと。よくこんな怖い双子に向かって啖呵が切れたなあ、私。現実世界で見た誰よりも恐ろしいです。こんなのが出てくるなんて、本当どうなっているのですか、私の深層心理！
「おい、お前ら！ 落とし穴つくってんじゃねえ！」
え、あ、あれは……！
ええっ！？
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作者名：フェン | 作成日時：2014年7月7日 22時
