ハートの国と余所者�� ページ8
危ないとは思いましたが、森の中の小道をもう少し歩くことにしました。まあ、もしも野獣が襲ってきたらご馳走になりますしー。美味しそうですねえ、熊鍋。
そんな私の殺気を知ってか知らずか、動物は結局襲ってきませんでした。
……残念です。
暗闇でしたが、何故か得体のしれない恐ろしさとかは感じませんでした。
この暗闇にも目が慣れてきたころ。森を抜けた先に明かりが見えます。うっすらとした明かりですけれど……。人間がいるってことですよね？
もしかしたら、泊めてくれるかもしれないですよね！
淡い期待を抱きながら、その方向に突き進んでいくと、そこに見えたのは民家などではなく。
「や、屋敷――」
うん、下町出身の私には一生お目にかかれないくらいの大きさ＆豪華さです！
何で門が全開なんでしょう？
こんなんじゃあ泥棒さんに入られ放題じゃあないですか。
「凄いですねえ……」
もう言葉に出来ません。貴族みたいに豪華絢爛な――。
「ねえ、お兄さん、誰？」
「へっ？」
いきなり声をかけられ、振り向くと、そこには、
「もしかして、敵なのかな？」
「うーん。でも、ひょろひょろしてるね。敵だとしたら……」
「なめられたものだね、兄弟」
赤と青。色違いの警備服を着た、双子らしき少年たちが、私の首に斧を突きつけていました。どちらも鈍色の髪をしていて、警備服と瞳の色は全く違う色。それなのに、殆んど見分けがつきません。
瞳の色だけですねえ、見分け方は……ってええっ！？ わ、私何かしましたか！？
「あ、あのー……、私、お兄さんでは――」
それよりも前に否定することがあったので、訂正しようと試みます。
「とりあえず、斬っておこうか、兄弟」
「うん、そうだね、兄弟。お姉さんに何かあったら、大変だもん！」
しかし、彼らは聞く耳を持たず。
青い服を着たほうの少年がにっこりと己の片割れに笑いかけると、赤い服を着たほうの少年もにっこりと笑い返し、
「お姉さんは弱いからね。僕らが守ってあげないと」
あのー。私、女だし、敵でもないですよー……。
そ、そういえば時計塔の人がマフィアの帽子屋屋敷、とかいってたような……。
ま、まさかここが！
「ここって、マフィアの帽子屋屋敷、ですか？」
「そうだよ、お兄さん」
そ、そんな馬鹿な。
子供が門番を務めるマフィアって……。人員がいないんですかね？
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作者名：フェン | 作成日時：2014年7月7日 22時
