ハートの国のアリス［名前固定］ (ページ5)

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ハートの国と余所者Ⅲ ページ5

「ん……」
　目を覚ますと、そこは。
「何ですか、ここ……」
　石造りの建物でした。
　どうやら、塔のようですね。うわー、空があんなに近いですー。

　って、ええええええっ！？

　そのふちに駆け寄り、周辺に知っている建物がないか探します。状況確認、とても大切です。
　周りは度派手な城、馬鹿でかい屋敷、遊園地……？
　って、いやいやいや、えええええええっ！？
　ないわ、えー、何ですかここ！
「こんなところ来た覚えないですよ！」
　私、今まで自分の部屋に……えええええっ！？何だか状況把握しようとしたらさらにこんがらがりましたよ。
　わけも分からず、立ち上がった私でしたが……。
　……と、とりあえず、下りてみます。
「す、すみませーん……。だ、誰かいませんかー？」
　うう、返答がありません……。
　すると、下の方にドアが見えました。一般的な、何も華美な装飾がないドアです。

「何だ、騒々しい」

　あっ、声が返ってきました！男の人の、低い声です！

　ドアががちゃりと開いて、長い藍色の髪を持った、きれいな男の人が出てきました。時計を長いコートにつけた、長身の男の人。若干服装のセンスがあれですけれど、顔は綺麗です。時計をネクタイみたいに着けています。時計が好きなのでしょうかね？
　その人は私を見ると、その綺麗な顔を歪めて、うっ、とうめき声を上げました。

「お、おまえ、もしかして、余所者か！」

　ハテナマークを浮かべる私を放って彼は舌打ちをして、ぶつぶつ呟きました。
「今度は誰が手引きしたんだ……」
　そして私に向かって、
「おい、おまえ、ハートの薬は飲んだのか？」
「え、えーと…」
「飲んだのか、と聞いている！」
「あ、あのー……。それってもしかして……ハートの蓋の小瓶の中の苦い液体ですか？」

　もじもじしながら聞くと、男の人は天を仰ぎ、嘆息しました。うわっ。眉間のしわがマリアナ海溝ですよっ。
　何か、まずいことだったのでしょうか……。
「ついて来い。説明してやる」
「は、はい！」
　わけが分かりませんが、ついていくことにしました！
　どうでもいいですけど歩調早いですね。