ハートの国のアリス［名前固定］ (ページ29)

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学園生活Ⅶ ページ29

もちろん、私が殴ったからである。

「な、なにすんだ！」

「アリス……リデル……先輩……？」

　当の本人であるセシルも呆気にとられた表情をしている。それはそうよね。いきなり無関係の人間が入ってきて、相手を殴り飛ばしたら。

「あんたねえ、女の子に向かって、そんなことを言って恥ずかしくないの！？まず家庭環境は本人にどうこうできる問題じゃないし、それにあんたみたいに感情に流されるタイプの人間のほうが大成しないわ！彼女のお兄さんは今関係ないでしょう！？」

「……え」

「何を呆けているの？さっさと謝りなさいよ」

「女？」

　え？まさか……。

「男だと、思っていたの？」

「……(目を逸らしながら)実は……」

　周りの目を気にしているみたい。
　すると、それに気づいた私の友人が、

「はーい、皆さん、ほらほら、散った散った」

　流石だわ！気が利く友人は一人作っておくべきね。

「ほら、セシルちゃんも」

「え。でも……」

　セシルはちらり、と私を見やった。嫌いな相手にも気を遣える……。やっぱり真面目な子なのね。それだけにかわいそうね。ああ、面倒くさいわ。
　今日のランチは抜きみたい。

「気にしないで。それじゃあ、セシルを頼むわ。私は――」

「ひいっ」

「この後輩と話をつけてあげる。待ってて頂戴」
　