ハートの国のアリス［名前固定］ (ページ3)

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ハートの国と余所者Ⅰ ページ3

よし、これで完璧ですっ。

　お世話になった、大好きな先輩。アリス＝リデル先輩を探すための準備は整いましたよ。

　調理道具セット、ティッシュ、ハンカチ、定期券、お財布。もう足りないものは――っと忘れるところでした。これこれ。着替え。

「……兄さん。行ってきますね」

　まだ小鳥すら起きていない時間帯です。
　すやすやと寝ているであろう兄へ挨拶をします。だってもしも言ったらあの過保護な兄なら確実に止めるに決まってますし。だって寄宿学校に入るのでも猛反対されて閉じ込められかけたんですよ？

　二人だけの家族ですしね。心配性になるのもまあわからなくもないですが行き過ぎだと思うのです。そろそろ兄さんに心配をかけないような大人になりたいものです。

　私は調理道具セットが入っているポーチを腰に着け(ウエストポーチってやつです)、立ち上がろうとしました。

　しかし。

「うわっ！」

　着替えが入ったカバンに躓き、転んでとっさに手を伸ばしたのは大鏡でした。

　か、鏡って、これ割れるかもしれないじゃないですかっ！危機感を抱いたのもつかの間。
　手が鏡に触れた瞬間――、

「えええっ！？」

　手を引っ張られる感触が！
　そのままずぶり、と引きこまれてしまったのです！