中原さんの黒帽子。【文豪ストレイドッグス】

黒帽子が十五つ ページ18

暫し夢現になり、顔に当たる風が異様に冷たいことに吃驚して顔をぶるぶると振り回した。
其の動作と同時に水飛沫が腕を濡らした。


「嗚呼、生暖かいな……」


直後、自分の発言に違和感を覚える。
己の事だけに集中してみると、身体に張り付いた衣服や真上に見える空の理由が嫌な程に理解出来た。


落ちたか、池に。


Aは実感した。もうこの池に近寄ってはいけないと。
ふっと身体の力が抜け、Aは項垂れる。既に雨は上がっており、灰色の雲の隙間からは澄んだ水色が確認できた。


さてさて、と呟き顔を上げた。と同時に視界が真っ黒に染まる。Aの口からは「おぐっ」と何とも可愛らしくない呻き声が漏れた。


顔面に有る異物感の感触と、ほんのりと漂う花の洗剤の香り。何だか思い当たるものがあり、まさかなと半信半疑ながらおもむろに其れを手に取った。





……帽子。


吸い込まれそうな黒色だった。
当初とは打って変わった反応を示したAは実に厭そうな表情を浮かべ、今にも捻り潰しそうな握力で帽子を握り締めた。


走る音が谺響したかと思えば、Aが予想したとおりの人物が憎々しげに此方を睨みつけていた。


「やあ、中原さん」
「手前本当太宰に似てきたな」


帽子を掴む左手をすっと上げると、中原は右手で顔を覆いながら足を踏み鳴らした。
身長が盛られていないせいもあってか、中学生位のコスプレイヤーが愉快な舞を踊っているように見えるのは錯覚だと信じたい。


「帽子を潰す気か手前は！」
「ご希望なら今すぐ強風でちりちりに裂いて差し上げますが」
「ンなモン一生頼まねェよ！」


中原はずかずかと大股でAに近寄ると、手の中の帽子を奪おうとした。が、Aによってがっちりと掴まれた帽子はびくとも引っ張られない。


中原の心情は大荒れだった。海に例えるとすれば航海中の大船を全て飲み込んで沈めるほどの荒天である。





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お久しぶりです(クソ
しかも8月くらいに書き溜めてたものをコピペして執筆した気になっています(クソ
Twitter楽しいです絵描くの楽しいです(クソ

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