交わる世界・3 ページ38
「っ。…太輔、あの、さ」
「うん？」
「…なんで、そんな…たくさん、着込んでるの…？」
ハンドルを握る太輔の指先がぴく、と動いた。 朝に感じたものの正体が、ようやくわかる。
太すぎるんだ。太輔は細身だから、トレンチコートを羽織ったくらいじゃ、こんなに体は厚くならないはずだ。これじゃ、まるで防弾チョッキを着てるみたいな…。
オレがそう言ったら、太輔は肩の力を抜いてふっと笑った。
「鋭いね、わたは。そして賢い」
その呟きの直後に、また後ろからクラクションを鳴らされた。パン、と乾いた音も響く。太輔がはあ、とため息を吐いた。
「…さて。当たり前だけど逃がしてくれる気もなさそうだし、こっちも戦闘準備に入らなきゃいけないかな」
「太輔」
「味方になってくれる、わた？」
ちらりと、一瞬だけオレを見た太輔は笑っていた。それはどこまでも優しくて強い、自信に満ち溢れた艶やかな微笑みだ。
そんな表情を何度も見せられてきたオレの答えなんて、聞かれるまでもない。
「オレが信じられるのは、太輔しかいないよ」
前を睨む太輔の、綺麗な横顔をしっかり見つめた。
「オレは頭も要領も悪いし、今は太輔の足手まといにしかならないと思う。自慢できるっていったら記憶力ぐらいしかない。でも、オレが太輔に与えられるものだったら何だって与えたいし利用してほしい。そのかわり…助けて、ほしい」
太輔の目が、一瞬、驚いたように見開かれる。すぐにふっと和らいだその目尻が、少しだけ輝いた気配がした。
「…もちろんだよ。必ず守るよ。命に代えても」
オレの心をまっすぐに貫いたそのセリフに、自然と頷きを返していた。
「オレは…今、何かできる事はある？」
「そうだね。助手席の足元に俺のバッグを置いてるから、そこに入ってる仕事用のスマホを出して。それでタマに電話を…」
余裕の笑みを浮かべながらそこまで喋った太輔が、はっと口を閉じた。しまった、と苦しそうに呻く。
「…だめだ。仕事用のスマホにはタマの番号が入ってない。…くそ、ムリだ…！」
「タマさんの、番号…？」
その瞬間、オレの頭の中に浮かんだのは十一桁の数字だった。
罪悪感と好奇心とで覗いてしまった、太輔のスマートフォンに登録されていた、五件の連絡先。
「っ。あの…オレ、わかるよ…」
オレの言葉に、太輔が勢いよく振り向いた。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして！こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…！ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (
レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして！面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます！ (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます！そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです！絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます（笑）ドキドキするお話をありがとうございました！ (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました！ (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年12月15日 20時
