記憶の外側・3 ページ35
相変わらずの優しいキスと微笑み、優しい言葉はいつも通りなのに…とテーブルに視線を動かすと、綺麗にさらえられた食器が目に入ってきた。唇がふふっとゆるみかけて、オレは、その横に置かれているものにハッと目をみはった。
「あ。太輔のスマホ…」
太輔がいつも肌身離さず持っているスマホ。そういえばさっき通話が終わった後、テーブルに置いてたっけ。
「どうしよう。太輔これ、仕事で使うよな？」
ちら、と玄関の方を振り返る。太輔が帰ってくる気配はない。太輔はさっき出たばかりだから、走れば間に合う可能性はある。
でも、太輔から「外に出るな」って言われてるし…。
太輔の怒った顔を思い出しながら、テーブルに置かれたスマホにちらちらと視線を送る。
太輔がずっと…おそらく三年前からずっと使ってるスマホということは、仕事に必要不可欠なもので、なくちゃいけない物なんだと思う。
そもそも太輔がスマホを忘れた事なんて今までなかった。それぐらいこのスマホは太輔にとって重要だって事で。
(…だよな。なくちゃ、困るんだもんな)
言いつけを破って怒られるよりも、太輔がピンチになったり困ったりする方がよっぽど辛く思えた。それで取り返しのつかない事になっちゃったら、そっちの方が大変だ。
玄関をキッと睨み付けてから、大きく足を踏み出す。オレの足はあの夢と同様に、オレの意識とは違うところで勝手に動き出した。
オレの足はまるですべてを理解しているかのように、玄関を飛び出してエレベーターを横切り、階段をかけ降りた。両手に拳を作って、必死に前後へ振ってかけ降りる。
きっと、そうした方が早く下に着けるんだろう。
数えきれないくらいたくさんの階段を降りて、ようやく階段が途切れて周囲が明るくなった。先に見えているのはエントランスだ。
人間の本能なのか、それとも、オレの不思議な能力の一部なのか、興奮からなのかは分からないけれど、人間ってすごいんだなとふと感じる。
だって、休まず階段をかけ降りてきたのに息ひとつ切れていないし足も疲れていない。
さああと一息だ、と重いエントランスの扉を開け放った時だった。
視界いっぱいに広がる風景に、オレの体が固まった。
「……え、っ？」
向かいに建っていたマンションは、テレビで見た、今騒がれていた俳優のマンションと同じ外観で…そのすぐ横には見覚えのある黒のセダン――夢の太輔が乗っていた車――が停まっていた。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして！こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…！ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (
レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして！面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます！ (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます！そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです！絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます（笑）ドキドキするお話をありがとうございました！ (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました！ (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年12月15日 20時
