記憶の外側・2 ページ34
組長と幹部は銃を所持して逃げた可能性が高く、他に利用していた場所も含めて行方を追っているそうだ。
「怖いな。武器を持ってるのが分かってるのに行方がわからないって」
「いや。もう突き止められてるよ」
「えっ？」
即答してきた太輔は、真剣な顔でテレビを凝視していた。
「こういうのは犯人側に知られてもいい段階の情報しか流さないから。実際の捜査はもっともっと進んでるんだよ」
太輔は少し荒っぽい仕草でスマホをテーブルに置いた。最後の一口だったフレンチトーストを、大きな口で頬張る。
「…そう、なんだ…」
「さ。ちょっと早いけど、そろそろ行くね。…今日は遅くなるかもしれない。お留守番、よろしくね」
「あ。…うん、わかった」
オレと視線を合わせた太輔が、ふわっと柔らかく微笑んで髪を撫でてきた。目を閉じて三秒、優しく触れ合った唇がわずかな熱を残して離れていく。
もう一度見つめ合って、行ってらっしゃい。行ってきます。
そう続くのかと思ったら、太輔はオレの体をぎゅっと抱きしめてきた。心臓がどきんと跳ねて、早鐘を打ちはじめる。同時に、また微かな違和感が生まれた。
(…あれ、っ？)
なんだろう。なんだか…しっくりこない。
何が、って言われれば首をかしげるんだけど、なんだか、いつもと違うような感じがする。
そう、違和感だ。だけど、違和感の原因はやっぱり分からない。
「っ。た、太輔…？」
「ごめん。ちょっとだけ勇気を分けて」
そう囁いた太輔は、オレの輪郭を確かめるようにぎゅ、ぎゅっと抱きしめたあと、名残り惜しそうにゆっくりと解放してくれた。
「うん、もう大丈夫。ありがとう。わた」
そう言って微笑んだ太輔は、いつも通りの表情で…でも、いつもなら自然と微笑み返してしまうオレの心は違和感と不安とでいっぱいになっていく。
「っ。た…太輔、っ」
急に胸騒ぎがして、太輔を呼び止める。
「…帰って、きて…絶対」
そんな台詞がぽろりと溢れたら、太輔はゆっくり笑みを結んで
「うん」
と頷いた。
それはどこまでも優しくて強い、自信に満ち溢れた艶やかな微笑みだった。
太輔が外に出て行ったのを見送って、オレは、落ち着かない心をぎゅっと握りしめた。
…この胸騒ぎ、いやな予感。なんだっていうんだろう。
太輔も、なんだかいつもの太輔じゃないような気がして、理由の分からない違和感があって、思い出すと変な気持ちになる。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして！こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…！ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (
レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして！面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます！ (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます！そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです！絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます（笑）ドキドキするお話をありがとうございました！ (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました！ (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年12月15日 20時
