繋がる線・3 ページ31
睡眠前、太輔とオレはいつものようにレモネードを飲みながら談笑していた。
だけど今日のオレは、夢と現実が重なり始めているからか…気がつけば太輔の右手をじっと見てしまっていた。そのたびに、慌てて太輔の顔やテレビへと視線を戻す。
太輔はいつもどおりに優しく話しかけてくれるし、ちっとも面白くないオレの話も楽しそうに聞いてくれている。
でもたぶん…オレがいつもの様子と少し違っているのには、気づいているはずだ。
太輔に、打ち明けたくないわけじゃない。
でも、一気にたくさん入ってきた情報のせいでオレ自身もまだ戸惑いが強すぎて…太輔にしっかりと説明できる自信がない。
仮にこれが、完全にオレの妄想だったとしたら…頭のおかしい奴だって思われるだけだろうし。
(まさか、夢であんな衝撃的なシーンを見る事になるなんて…)
そう思いながらレモネードをこくりと飲み込めば、テレビから
「速報です」
とキャスターが喋った。同時に、太輔のスマホが着信を告げる。
「…はい。…今見てる。すぐかけ直すから」
低い声でそう言った太輔が、通話を切ってテレビを睨み付けた。
テレビでは朝の俳優逮捕のニュースが読み上げられて、おそらく俳優がいたのであろうマンションの一部が映っていた。エントランスには、モザイクがかかっている。
続いて、そこに出入りしていたと言われる祭舞組の人達の顔が二人、映った。
(っ…!)
防犯カメラの映像だろう、ぼやけているけれど、顔はしっかりと認識できる。その二人の姿に、オレの頭がギリッと締めつけられた。心臓がぎゅうっと締まる。
(…なんで…知らない…会ってない。知らないのに、何でオレは覚えてる…?)
背中がすうっと冷たくなって、唇が震えだす。異変に気づいた太輔が
「わた…?」
と肩に手を添えてきた。オレの震えが少しだけおさまって、呼吸が楽になった。
「どうかした?顔色が良くないけど」
「…あ…」
キャスターが、映像の男は祭舞組の組長と幹部だと告げてくる。オレの唇はかたかた震えながら
「オレこの人、知ってる。…二人とも」
そう動いた。太輔の顔が一気に強張る。
「っ!知ってるって…どうして」
「分からない…知らない…」
肩を掴んできた太輔には、そう答える以外になかった。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして!こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…!ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして!面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます! (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです!絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます(笑)ドキドキするお話をありがとうございました! (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました! (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年12月15日 20時