二人の関係 ページ4
太輔は、いつもの時間ぴったりにスーツを着込み、身支度を整えて席を立った。ネクタイを締め直した彼にお弁当箱を差し出すと、ありがとうと微笑んでくれる。
「じゃあ、行ってくるね。今日は七時ぐらいには帰れると思うけど…遅くなっちゃったらごめんね」
「わかった。いってらっしゃい」
「うん、行ってきます。カーテンは閉めたままで、外には絶対に出ちゃだめだよ。インターホンがなっても無視するんだよ」
毎日繰り返される言葉に頷くと、太輔はほっとしたように表情をゆるませた。す、と真顔に戻った彼に見つめられて、オレもじっと太輔を見返す。
一、二、三秒。
オレ達の唇は、遠慮がちにふわりと触れ合った。
「…じゃあ。お留守番、よろしくね」
太輔は息が止まりそうになるほど綺麗な微笑みを浮かべて、玄関に続くドアを開ける。
オレは玄関から顔を出すことも禁じられてるから、お見送りはいつもダイニングだ。ばいばいと手を振ると、小さな頷きを返してくれた。
玄関のカギが閉まる音を確認して、オレはテーブルの上に並んだお皿を片付ける。綺麗にさらえられたお皿達に、口元がふっとゆるんだ。
太輔は、オレの出したご飯を絶対に残さない。たまに、スマホに連絡が来て慌ただしく出て行く日もあるんだけれど、それでもしっかり食べ終えて出かけていく。
すごくすごく小さな、とても些細な事なんだけれど、オレはそれが本当に嬉しい。
やくざさんって、すごく怖くて、気に入らないことがあったらすぐ殴ってくるってイメージだったのに、太輔は全然違った。だめっていわれてる事に対しては目も声も怖いけど、でも、絶対に手はあげないし怒鳴り散らしたりもしない。いつも気を遣ってくれて優しいし、できる限りオレを優先してくれる。
正直なところ快適なのだ。とても。
オレがわけのわからないままこの生活を三年も続けていて、自分の記憶が戻らない事にあまり危機感を抱かないのも、太輔との生活に満足していて、不満という不満がないからなんだと思う。
あとはオレ達の関係がどういうものだったのかさえ早く判明してくれれば、もっと楽になるんだけれど。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして！こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…！ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (
レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして！面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます！ (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます！そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです！絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます（笑）ドキドキするお話をありがとうございました！ (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました！ (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年12月15日 20時
