点と点・3 ページ28
得体のしれない正義の味方や大きな勢力なんかよりも、三年間、何の役にも立てないオレを優しく守ってくれた太輔のほうがうんと信じられる。
(今更だけど…こんなにもオレは、太輔を思ってたんだな)
夢の太輔も現実の太輔も、オレは嫌いじゃなかった。必死に心配して、信頼して、従ってきたから。たとえオレが太輔に信用されていなかったとしても、今のオレが信じられるのは太輔だけだ。
それに、二人でお出かけできるようになる日に向けて頑張ってくれてるって、そう言ってくれたし。
…それは、ほとぼりが冷めるまで…もしくは時効を待つ、って事なんだろうか。
それとも…替え玉の犯人役を調達する日までって事なのか。だとしたら、ニュースの俳優がそうだって事も、ありえる…?
「…そんなわけ、ないか」
太輔が麻薬を買ってたとかならともかく、太輔はおそらく組の偉いさんなんだろうから。有名人が身代わりに逮捕されたところで、何も得はしていないはずだ。むしろマズイ事だと思う。
まず、太輔は絶対にそんなものに手は出さない。
たった三年間しか一緒にいないけれど、太輔の事を何一つ知っているわけじゃないけれど、これだけは何故か、自信を持って断言する事ができた。
(祭舞組。か)
知っている訳じゃない。記憶なんて、もちろんない。
でも、この、今までに感じたことのない胸騒ぎや不快感。
オレ達と関係してるっていうサインだと、そう思えてならない。
テレビは、繰り返し同じ速報ニュースのテロップを流した。捜査に少し進展があったのか、内容がちょっとだけ変わっている。
「別宅にしていた、俺足区のマンションにいたところを逮捕か。…あれっ?」
俺足区って…ここの住所も俺足区なんじゃ…?
以前、ソファに落ちていたダイレクトメールの住所を思い出す。
藤ヶ谷 太輔様の文字の上には確かに、俺足区って書かれてた。見間違いじゃない。覚えてる。
絶対に勘違いはない。この部屋の住所は俺足区だ。
「ここは、俺足区。俺足区まえあし町…」
その瞬間、オレの中に、細い光が差し込んだような気がした。
理由は分からないけれど、どうしてだろう。気分が高揚している。ワクワクと不安と、泣きたい気持ちと…なんでだろう。嬉しさまで込み上げてくる。視界が滲みそうになる。
「…これ以降の情報、しっかり見ておかないとな」
ゆっくり頷いたオレは、静かにテレビを消して自室へと向かった。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして!こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…!ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして!面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます! (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです!絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます(笑)ドキドキするお話をありがとうございました! (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました! (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年12月15日 20時