検索窓
今日:15 hit、昨日:18 hit、合計:25,761 hit

夢の記憶・2 ページ22

 せっかく来た、って?

 ここに来た意味って、なんだ?

 オレが教えたって、いったい何を?


 …まさか、ここの場所、もしくはここにある何かをオレが太輔に教えたっていうのか?
 なんで?何を、何の目的で?


 太輔はやくざで、オレは太輔にこの場所を教えて…オレは、たぶん太輔の味方で…。

 …それで、今、太輔と何者かが銃を撃ち合っていて…つまり、オレ達がここに来たところを敵に見つかったと推理するのが一番自然で…。…ということは…オレは…。


(スパイ、だった?…太輔の)


 何かが、頭の中で繋がったような気がした。


 オレは太輔の愛人で、太輔の指示によって情報収集やスパイ活動をしていたとしたら…もしくは、させられていたとしたら。


 それならばオレ達の不思議な関係や、オレが家族の記憶を持っていない、会いに来てもらえていない事にも説明がつく。


(太輔がオレを隠そうと必死なのも、オレの存在自体が世間にとって不都合だから…か?)


 やくざの愛人で、おまけに裏の仕事にも関わってただなんて…血縁者から絶縁されてたって、親しい友達がいなくたって全然おかしくない。


 そういう事情なら、現実世界のオレが太輔の監視下にあるのも納得だ。
 だって、もし記憶喪失者として病院や警察に保護されちゃったら、オレから組やこの場所の情報が漏れてしまうから。


(…そうか。だから太輔は、電話にしろ郵便物にしろ、オレにほとんどの情報を見せないんだ…)


 思い出さないように、他を頼って逃げ出せないように、世間との関わりを絶たせたんだ。
 やっぱり、いくら味方であっても深く信用はされていないんだろう。


 気持ちがずんと沈みかけたその時に、再び夢の中の時間が流れ出した。


「いい、よく聞いてね渉。車にたどり着くまで、俺が絶対に守ってみせる。だから渉は何も気にしないで走って。俺を振り返らないで、周りを見たりしないで、一刻も早く、車の中に逃げ込んで」


 強く、鋭く、少し焦りの滲む声で伝えられる。

 それだけで、今オレ達が置かれた状況を察するには充分だった。職業柄、数々の修羅場を経験しているはずの彼がこんな声を出すんだ。きっと、オレが想像してるよりずっとヤバいんだろうと思う。

夢の記憶・3→←夢の記憶



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (95 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
117人がお気に入り
設定タグ:わたたい , 藤横   
作品ジャンル:タレント
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして!こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…!ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして!面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます! (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです!絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます(笑)ドキドキするお話をありがとうございました! (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました! (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:風華 | 作成日時:2021年12月15日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。