スマートフォン・2 ページ18
猫が太輔に電話をかけてきたら、それこそ大事件だ。自分のセリフを鼻で笑う。くだらない。
「そんな事より、早く持って行かないとだよな」
相変わらず『タマ』さんからの呼び出しは続いている。これだけ長く鳴らしているという事は、きっと大事な用件に違いない。
そう納得してスマホを掴むと、ちょうど、オレの親指がスマホの画面の上を軽く滑ってしまった。
緑色の受話器のマークが、大きく中心に移動する。
「あ!やば…!」
出てしまった…!
頭が一気に冷たくなって、全身の毛穴がぶわっと開く。全力疾走をはじめるオレの心臓に
『遅いよガヤー!』
なんてあどけない声が突き刺さってくる。テレビ電話になっているらしく、黒いスーツ姿の青年の横顔が映し出された。
…なにか作業をしながら電話してるんだろうか?
その整った横顔が、くるりとこちらを向く。
『もー、忙しいんだから早く出てよねー。早速なんだけどさ、今日流してくれたのをミツに…って。あれ…?』
目が合った瞬間、太輔よりも少し幼い雰囲気の青年が、身を乗り出すようにしてオレの顔を凝視してきた。ぱち、とまばたきをしながら、ゆっくり首をかしげてくる。
やばい、やばい。
ダメだって太輔に言われてたのに、外の人間と会ってしまった。
「あ、あわわ…」
『あれれれ。…あれ?これガヤの携帯だよね?…んん…?』
「あ、あの、あの…」
…とても、イケメンの男性だ。
太輔とはまた違ったタイプの甘いマスクで、どこか甘えるような声が可愛らしく思える。
やっぱりイケメンの周りにはイケメンが集まるんだろうか。
この人も優しそうだけど、やくざさんなんだろうか。
太輔とどんな関係なんだろう。
流したって、何を?
そしてミツって隠語?それとも共通の友達…?
動揺と焦りがマックスの中で、一気に押し寄せてくる疑問にがたがたと震える事しかできない。
本人に代わります、そのたった一言がスムーズに発せない。
「え、っと…あの、いま代わって…」
『あっ、そっか!わたさんだ!わたさんじゃない!?』
動揺してるオレを見て、なにやらピンときたらしいタマさんが手をぽんと叩いて笑顔になった。
こころなしか、目の奥がきらきらしてる気がする。
『ね、わたさんでしょ?ガヤのお姫様のわたさん!そうじゃない!?』
「は、はい…えっ。は、おひ、っ!?」
お姫様!?お姫様って言った?この人。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして!こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…!ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして!面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます! (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです!絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます(笑)ドキドキするお話をありがとうございました! (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました! (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年12月15日 20時